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歌詞

ラブレター

Anti-Trench

いいんだ

ペンキ塗りたてのベンチに勢いよく座ってもいい

ガアーッと怒鳴って階段を駆け下りてもいい

コーラゼロのペットボトルをめいっぱい振ってみてもいい

誰かの口笛に即興でハモってみてもいい

鍾乳洞の湧き水のように沈黙してもいい

寒ければ毛布をかぶってもいい

いいんだ

本気を出したらどれだけ高くジャンプできるか 試してみてもいい

なくしたものを愛しなおすための深呼吸に丸三日を費やしてもいい

鶏肉と大根のスープを煮込んでもいい

靴紐をすべてかわいいリボンに変えてもいい

一切を他人事と思ってもいい

携帯電話を川に投げ込んでもいい

花を一輪さらってきてもいい ただしちゃんと活けてやれるなら

好きなだけチョコレートを頬張ってもいい

誰かとハイタッチしてもいい

神さまを口汚く罵ってもいい 全部お前のせいだぞ 全部 クソ

一回くらいなら試しに非常ボタンを押してみてもいい

パンの白いとこだけくりぬいてもいい

泣いているひとを見かけたら そのひとに正しい敬意を払った上で かたく抱きしめてもいい

信じなくてもいい

いいんだ

このシャボン玉が宇宙に届くまで 壊れないと希望をかけてもいい

職業をたずねてきた警官に「詩人です」と 「アーティストです」と「にんげんです」と 答えてもいい

空へ口をあけて雨を飲んでもいい

笑い声の大きさに気を遣わなくてもいい

何もないところでつまづいたことをそんなに恥じなくてもいい

立ち入り禁止の標識を引っこ抜いて 砂浜にぶっ刺して ぼくらの揺るぎない革命の旗にしてもいい

ぼくがきみに許すすべてを きみが許さなくてもいい

雪にシロップかけて食べてもいい

海や空を美しいと思わなくてもいい

食事のあとにいただきますをして はみがきするより先に寝ても

電車に乗ってから行き先を考えて いっぺんは泣きやんだことで何度でもまた泣いてもいい

何度でも 何度でも

それでいい なにもかもそれでいいんだ

あきらかに飛び越えられない水たまりに果敢に挑んでみてもいい

一生のお願いを一万回使ってもいい

なんだかもう叫びだしたいくらいのときはそうしてもいい 好きだ 好きだ 好きだ 好きだ

どうしてもっていうなら マグマを煮つめるように誰かを思いきり憎んでもいい

眠くなる前に眠ってもいい 二十八度寝してもいい

裾をまくって川にずんずん入っていってもいい

雲を見ていたら死にたくなってもいい

踊りたければ踊っていい ダンスを習ったことがなくても

何度でも 何度でも 何度でも 何度でも

いいんだ

ペンキ塗りたてのベンチに勢いよく座ってもいい

ガアーッと怒鳴って階段を駆け下りてもいい

コーラゼロのペットボトルをめいっぱい振ってみてもいい

誰かの口笛に即興でハモってみてもいい

鍾乳洞の湧き水のように沈黙してもいい

泣いているひとを見かけたら そのひとに正しい敬意を払った上で かたく抱きしめてもいい

何度でも!

問いかけていい

あきらめなくていい

わざと傘をささずに豪雨の中へ駆け出てもいい

じぶんだけのために梨を剥いてもいい

満員電車でとなりの人に控えめに体重を預けてみてもいい

好きなひとに好きなときに電話をかけていい

その程度のことで傷ついてもいい

横断歩道を裸足で渡ってもいい

いいんだ だから

  • 作詞

    向坂くじら

  • 作曲

    クマガイユウヤ

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アーティスト情報

  • Anti-Trench

    Anti-Trench 詩人・向坂くじらとGt.クマガイユウヤによる朗読ユニット。2020年1stAlbum「ponto」「ŝipo」リリース。 向坂くじら 詩人。第一詩集『とても小さな理解のための』(しろねこ社)。朝日新聞、共同通信社配信の各地方紙、他雑誌などに寄稿。教育の分野でも活動し、各所で詩の出張授業を実施するほか、2022年埼⽟県桶川市にて「国語教室ことぱ舎」を自ら創設する。 クマガイユウヤ ギタリスト、コンポーザー。 セッションミュージシャンとして幅広くジャンルレスに活動するだけでなく、ソロプロジェクト・THE NAAVなど、各所で精力的に活動中。BMSG所属アーティスト・Novel Coreのバンドメンバー。

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