

ある夜 円環は裁きの場に変わった
呼び出されたのは ただの一柱ではない
七十二の影 全員が揃い
王の前に姿を現す
ピアノが激しく 心臓の鼓動を叩き
ヴァイオリンが鋭く 問い詰めるような旋律を走らせる
オルガンが 法廷の空気を作る
合唱がざわめきの代わりに響く
超早口で影たちが訴状を読み上げる
「我らは約定通り働き 城を築き 神殿を飾った」
「だが約束された解放は 何度も延長された」
「王よ 汝こそ契約を破ったのではないか」
七十二の視線が
一人の人間に突き刺さる
それは民の嘆きに似ていて
少しだけ 神の沈黙にも似ていた
笛が張り詰めた空気を切り裂く
合唱が「有罪」「無罪」を
同じメロディで歌う
判定はまだ下っていない
王と影の審判が始まる
裁く者と裁かれる者の立場が
一瞬だけ揺らぐ夜
ソロモンは指輪を見下ろし
自分の署名を確認する
確かにここに 自らの意思で
名前を書いたのは自分だ
ピアノが低く 王の弁明を支える
ヴァイオリンが
自責と正当化の間を行き来する
超早口で王が答弁する
「汝らは本来 世界を乱す存在
働きによって罪を減じる契約だった」
「我は民を守るため 猶予を延ばしただけ」
それは理屈としては通っている
しかし影たちは笑う
「罪の量を決めたのは誰か」
「猶予の長さを測る物差しを作ったのは誰か」
問い返されるたびに
知恵の刃が逆向きに自分を傷つける
オルガンが深く 底なしの和音を鳴らす
合唱が「双方に落ち度あり」と
言いたげなハーモニーを重ねる
完璧な正義など
どこにも存在しない
王と影の審判の結果は
どちらか一方の勝利ではなかった
契約は見直され 鎖は少し緩み
その代わりに王国の壁は
わずかに脆くなる
正しさを一つ増やせば
どこか別の場所で
別の正しさが削られる
その当たり前の事実だけが
この夜の唯一の判決文
ピアノが和音を解き
ヴァイオリンが最後に
問いを残すような音を引く
影たちは再び円環の外へ消える
王は玉座へ戻る
どちらも完全には勝っていない
それでも朝は来る
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- 1
第一円環:名を呼ばれた影たち
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- 2
第二円環:王たちと矢傷
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- 3
第三円環:落下する名誉
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- 4
第四円環:血と学問
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- 5
第五円環:空の観測者
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- 6
第六円環:沈没と塩
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- 7
第七円環:鏡と誓約
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- 8
第八円環:機械と獣
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- ⚫︎
第九円環:終端の名乗り
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アーティスト情報
Story Sound-notes
ダークで少し不思議、でも耳あたりはチル。ローファイ/ヒップホップ/ジャズのエッセンスを少しだけ織り込み、読書・勉強・作業・休憩に寄り添うサウンドをお届けします。童話や旅人、魔女、古書、霧の森……そんな“情景”から生まれた曲や、物語をなぞるプレイリストも公開中。
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