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朝ぼらけ有明の月と見るまでに吉野の里に降れる白雪
百人一首31 坂上是則
(現代語訳:夜の明けるころ、まだ空に残る有明の月で明るいのかと見違えるほどに、吉野の里に積もっている白雪であるよ。)
朝、月の光、淡く美しい時間を上の句で喚起させ、下の句で吉野の里というロケーションが置かれ、最後にはすべて静かな白雪に覆われる。降る雪のあるかなきかの音を、全編通じて奏される八分音符の刻みで表現し、メジャーとマイナーが頻繁に入れ替わるおずおずとした和音の歩みが、まっさらな雪に少しずつ足跡を残していく。あらたな雪がその足跡も少しずつ消していき、なんの調号もつかないハ長調の音楽が、最後には世界を白くつつむ。
次郎丸智希 作曲家・ピアニスト・朗読家。福岡出身。大阪大学文学部卒(音楽学)、同大学院修了(ドイツ文学)、神戸大学大学院人間発達環境学研究科・博士課程修了(人間表現専攻)博士(学術)。第17回万葉の歌音楽祭・大賞、第28回TIAA全日本作曲家コンクール(重唱・合唱の部)第1位受賞。文学と音楽両面からアプローチする独自の作風で多くの作品を発表。現在、フェリス女学院大学・グローバル教養学部・文化表現学科・音楽身体表現専攻・准教授、お茶の水女子大学講師。主な作品に、独唱・重唱・合唱のための《百人一首によるうた》《万葉名歌集》、カンタータ《まかる空~竹取物語より~》、ピアノ4手連弾のための《MUSEUM》他多数。研究論文『武満徹作品における音楽語法の変遷―SEAモティーフを中心に―』、『武満徹作品における引用~《夢の引用―Say sea, take me!―》を中心に~』『歌曲の実践と文芸』『武満徹の音楽語法「SEAモティーフ」の萌芽と生成 ~《鳥は星形の庭に降りる(1977)》と《遠い呼び声の彼方へ!(1980)》の比較を通して~』