Lyric

風が吹いた昼下り

僕は薄く目を閉じて

空の向こうへ旅に出る

空想の彼方へ旅をする

冷めた珈琲に羊雲

開いたノートに黙々と

醒めない夢を書いている

褪せないように書いている

五線に咲いた小さな世界で

泡沫の君を待つ

空を描いて、雲を描いて

風の薫りには色を添えて

そこに君をひとり描けたのなら

ただ、それだけで良かった

日々を描いて、詩を描いて

夏の夕暮れを忘れないで

僕は今日も歌ってる

風に揺らめいた春紫苑

君は薄く微笑んで

僕を措いて歩き出す

空の彼方の向こうまで

浅い木陰に腰掛けて

そんな日々を想うのさ

醒めない夢を抱いている

褪せないように抱いている

廻り巡る大きな世界で

咲い会える日を待つ

朝を描いて、夜を描いて

夕に差す茜に頬を染めて

思い出のひとつを描けたのなら

ただそれだけで良かった

月日が舞って、季節が去って

声も面影も遠くなって

僕は今日も歌ってる

浅く吐いた、息を吐いた

苦し紛れの嘘を吐いた

別れ一つすら美しい、其れこそ

言葉が擦(なぞ)れるものか

それでも描いて、多く綴って

似顔絵だけが積み上がって

空を描いて、雲を描いて

風の薫りには色を添えて

そこに君をひとり描けたのなら

ただ、それだけで良かった

日々を描いて、詩を描いて

夏の夕暮れを忘れないで

僕は今日も歌ってる

思い出を描いて歌ってる

ずっと君を歌ってる

風が凪いだ宵紛い

僕は薄く目を開けて

醒めない夢を書いている

褪せないように抱いている