Lyric

「あの日、初めてセクサリスを見た。

星の記憶が人の形をとった存在。

アナスタシアの力を継承して、彼女の聲が聴こえた。

その心は擦り切れて、ただ暗い絶望に浮かんでいた――」

「選ばれたのは、第五の魔女。

私の聲を聴いてくれたのは、あなたで二人目。

そして、私の願いを叶えてくれる、最初で最後の神になる」

不可説　不可測　不条理な神の気まぐれ

世界の行く末　それさえ盤上の遊戯

可能性　可撓性　如何様に飾り立てても

選択一つで　其れが道理に書き換わる

『至りて愉快だ』

姿なき聲が嘲る

『枯れ果てんとする　我が身を明け渡そう』

代わる代わる神が綴り　繋いだパンタシア

『次の書き手はお前だ、灰に鈍く輝る魔女

絶望の果てに願う未来とやら

至上　至高　無二のシナリオを描いてみせろ――』

全てが無へと沈みゆく　いつかまた命芽吹くとき

凍てつく夜が来ないままで　優しい音に充たされて

《物語は困難を通って天へ》祈りを

「眩い光と深い闇に包まれて、選ばれし者は選ばれざる魔女を喰らい、メサイアを殺す。

その輪廻によって、この星は存続されてきた。

数多の絶望が私という星を生かし、殺し続ける。

――誰か、この星を終わらせて」

『怨嗟の聲を響かせる　敗残者を屠り

旧き至上神　殺めて　さあ、顕現せよ……！

世界を繋げよ　全ては星の為

存続させよ　現象を記録する為』

「神と魔女の理が、星の存続の為？

いいえ。それは永い永い時の中で、捻じ曲げられていったと知った。

如何に面白い御伽噺を描けるか。読み手が、望む刺激を求めて脚色していったのだ。

ねぇ、どこに本当の幸せがあるのでしょうね？」

重ね重ね災禍抱え　ひろがるパンタシア

何処から間違えたのか　誰にも解りはしない

此処が最終章　続きは綴らない

神も魔女も　星と墜ちるのよ――お生憎様。

ひとつひとつ剥がれ落ちて　消え逝くパンタシア

此処まで見てくれていた　あなたと共に往きましょう

星の幕引きはもうすぐ終わるから

何もかもが夢幻と化したら

――　やっと笑える　――

あなたも無へと還りゆく　いつかまた生まれ出ずるとき

どうか忘れ去られたままで　どうか幸せな夢見て

《物語は困難を通って天へ》綴じて

最果てから始まる、あなたへ

「さよなら……またいつか。

いえ、きっともう出逢うことはないでしょうけど。

これが本当の、終焉の歌――」