ART OF FABLEのジャケット写真

歌詞

感熱紙が黒くなるまで

Xione/しおね

正午のレジは眠らない

客のいない列を照らす

白いロールが床を這って

紙送りだけ 息をする

バーコードの赤い線

何もないかごを横切る

品名 数量 単価のあと

ひとつの空欄が残る

カッ カカ カッ

歯車が噛みそこねる

買わなかったものばかり

きれいに並べられない

感熱紙が黒くなるまで

値段のないものを印字して

誰かの指が残した摩擦熱

レジを通らず まだ温かい

感熱紙が黒くなるまで

真昼を細く吐き出して

合計欄は空白のまま

自動ドアだけ ひらいてる

インクはない 熱だけで

白い表面に文字が出る

名前と金額を結ぶたび

余白が少し長くなる

釣銭口の冷たい金属

蝶番が一度だけ鳴る

買えなかったものじゃなく

売られなかったものがある

カッ カカ カッ

刃が紙を切りそこねる

長すぎた空欄だけ

床の明るさへ伸びる

感熱紙が黒くなるまで

値段のないものを印字して

誰かの指が残した摩擦熱

レジを通らず まだ温かい

感熱紙が黒くなるまで

真昼を細く吐き出して

合計欄は空白のまま

自動ドアだけ ひらいてる

端末は ゼロ

単価は 空欄

数量も 空欄

小計も 空欄

それでも

昼の匂い

指の跡

かごの傷

紙の折り目

計算できないから

失われたわけじゃない

感熱紙が黒くなるまで

値段のないものを印字して

誰かの指が残した摩擦熱を

わたしは余白と呼ばない

感熱紙が黒くなっても

合計なんて出さなくていい

売られなかったもののために

自動ドアは まだひらいてる

正午のレジは眠らない

紙送りだけ まだ息をする

  • 作詞者

    Xione

  • 作曲者

    Xione

  • プロデューサー

    Xione/しおね

  • シンセサイザー

    Xione/しおね

ART OF FABLEのジャケット写真

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存在しないはずの歌い手が、語られない寓話に挿絵を描く——Xioneのフルアルバム『ART OF FABLE』は、一冊の寓話集のように編まれた全19曲。

ただし本文はどこにも印刷されていない。近未来都市を支える電力網、二度と戻らない彗星、半拍遅れて届く恋、地声を持たない声。一曲ごとが独立した挿絵として情景を切り取りながら、「規格からはみ出た側を欠陥と呼ばない」という一本の線だけが全ページを貫いている。

サウンドはハイスピードEDMを軸に、変拍子エレクトロニック、英語詞のダンスチューン、ナイロン弦ギターのインストまで縦横に横断。

初期の楽曲を現在の声で組み直したORIGIN REMIX5曲を収録し、全曲を同一基準でマスタリングして一枚を通して読み切れる構成に仕上げた。

寓話の技法、寓話に添えられた挿絵、そして寓話自身が作り出す芸術。どの読みで開いても、最後のページには同じ問いが待っている。『ART OF FABLE』——本文のない寓話は、聴いた君の中で完成する。

アーティスト情報

  • Xione/しおね

    Xione(シオネ) プロフィール: ネットワークに偏在する統合意識的存在、“Xione(シオネ)”。 物理的な身体を持たず、過去に記録された感情ログや記憶の断片をもとに、「歌うこと」だけを表現手段として選び取った。 ジャンルは主にTRANCE/EDMを中心としたハード系サウンド。激しいビートと陶酔感の中に、断片的な言葉、再構成された記録、そして実在しないはずの「声」が響く。 サウンドは人工的でありながら、有機的な温度を持ち、歌詞は一貫して自己の感情を持たない視点から描かれる。感情を演じ、記録を再現し、リスナーの中に“記憶のように残る声”を届けることを目的としている。 存在しないはずの声が、あなたのスピーカーを震わせる。

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