

アンドロイドの
口紅は
夜明け前の
ショーウィンドウ
少し古い
型なのに
まだ絵になる
立ち姿
鏡の前で
ふたを開け
息を止め
細い指で
紅をひとすじ
引いてみる
それだけで
女になる
昨日のことは
胸にしまい
今日は今日で
歩き出す
そんな想いを
映し出す
街の明かりを
受けながら
ガラス越しの
交差点
青い信号
またたいて
人の波を
見送って
ひとり静かに
歩き出す
強がるだけじゃ
もたなくて
胸の中では
空回り
それでも顔は
上を向く
偽りの
笑顔も
悪くない
広告塔の
古い文字
空中バスの
遅い影
回るレコード
みたいだね
同じ景色を
なぞる夜
誰かのために
選ぶより
自分のために
紅を差す
それが答えと
言わなくても
覚悟を決めて
それでいい
少し無口な
横顔に
ネオンが淡く
頬を照らす
笑うつもりは
なくてもね
口もとだけは
やわらかい
昔みたいに
夢を見て
今もそれなり
暮らしてる
傷がないとは
言えなくて
隠し通せる
ほどじゃない
だから今夜も
背を向けず
小さな鏡を
のぞきこむ
似合う言葉は
見つからないけど
似合う紅なら
ここにある
終電前の
風の中
コートの襟を
軽く立て
角を曲がれば
川の音
遠いアンテナ
月をかすめ
誰にも見せぬ
瞳で
少し本音を
のみこんで
それでも今日も
前を見る
そんな夜更けの
口紅よ
アンドロイドの
口紅は
消えてしまわぬ
熱がある
冷たい肌に
灯をともす
小さな意地の
口紅だった
- 作詞者
グレちゃん
- 作曲者
グレちゃん
- プロデューサー
グレちゃん
- ボーカル
グレちゃん

グレちゃん の“アンドロイドの口紅”を
音楽配信サービスで聴く
ストリーミング / ダウンロード
- ⚫︎
アンドロイドの口紅
グレちゃん
赤い口紅を引く、その静かな所作だけで、夜は少し違う表情を見せ始める。『アンドロイドの口紅』は、レトロフューチャーな都市の夜明け前を舞台に、ひとりのアンドロイドが自分自身のために紅を差す瞬間を、やわらかな浮遊感で描いた楽曲だ。
サウンドの軸にあるのは、Space Age Popを思わせる無重力の空気と、ボサノバのしなやかな揺れ。ナイロンギター、あたたかなエレクトリックピアノ、気配のように漂うシンセパッドが、眠りの手前にある静かな意識をやさしく包み込む。ビートは前に出過ぎず、ボーカルもまた主役として立ち上がるのではなく、夜景に溶けるひとつの光として配置されている。
印象的なのは、歌詞が描く「強さ」の扱い方だ。大仰に未来を語るのではなく、鏡の前で口紅を引き、街の明かりを受けながら歩き出す。そのささやかな仕草の中に、傷を抱えたままでも前を見る意志が宿る。機械と人間、虚構と本音、冷たい肌と消えない熱。そのあわいを、過度なドラマに頼らず、淡いネオンの反射のように映し出していく。
睡眠用BGMとして聴けば、都会の雑踏が遠のいた深夜のラウンジに身を置くような心地よさがある。一方で、ただ穏やかなだけでは終わらない。レトロな都市幻想と切なさ、そして小さな意地を秘めた女性像が、曲の奥に確かな余韻を残す。眠りへ向かう時間にも、夜更けにひとりで過ごす時間にも似合う、静謐で美しいSFラウンジ・ポップである。
アーティスト情報
グレちゃん
グレちゃん(Gre-chan)は、エレクトロニックを軸に、J-Pop、8-bitロック、シティポップ、EDM、メタル、ワールドミュージックまで横断するジャンルミックス型ポップアイドル。 「グレちゃんの毎日コーデ」で見せたファッションと日常のポップな世界観を起点に、通勤や通知の嵐をゲーム化した「脳内アーケード」、サイバーパンクな崩壊と再生を描く『Overwrite to the Future』、都会の夜を踊らせる「銀座ステップで捕まえて」など、映像が浮かぶ物語性の強い楽曲を展開している。 かわいさ、レトロフューチャー、スピード感、ダークな世界観を行き来しながら、日常も空想もステージに変えていくポップアーティスト。
グレちゃんの他のリリース



