人魚の骨のジャケット写真

歌詞

Outro : 朝凪

貝と蜃気楼

東の空が白む。海面が黒から青に色を変えていくのを、貝たちだけが見ていた。泡立つ砂に身を埋め、規則的に呼吸を繰り返す、ただ在る沈黙が朝を迎えようとしている、その最中に、少女がひとり浜に降りてくる。

砂はまだ昨日降った雨を含んでいて、ひどく頼りない彼女の足取りが、くっきりと跡を残した。海から来る風に煽られて、細い肢体が不安定に揺れる。白いシャツが膨らみ、飛び立とうとする雛が羽を広げているようにも見えた。

波打ち際に立ち、少女はゆっくりと、水平線をなぞるように視線を動かした。凪いでいた。沈黙だけがそこにあることを確認した。行く先を見失ったように、海面から上がる陽にただ顔を向け、ローファーの爪先が水に濡れても、空と海が真っ青に変わっても、そうしていた。

やがて、名も知らぬ鳥の鳴き声がして、見晴るかす海の向こうに、大きな影が立ち現れてくる。鉄塔と工場、肩を寄せ合う家々、それらは徐々に確かな形を持ち、水平線を埋めていく。少女はようやく瞼を伏せ、その知らない街の風景に背を向けて、自分の足跡を辿り始めた。

  • 作詞

    小宵

  • 作曲

    貝と蜃気楼

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アーティスト情報

  • 貝と蜃気楼

    耳を劈く轟音に物語性の高いリリックを乗せて鳴らすオルタナティヴ・ヘヴィ・ロックバンド。そのサウンドはスラッジコア、ブラックメタル、ハードコアパンク、シューゲイザー、USインディーなど様々な音が渾然一体となった唯一無二のものだ。メンバーは、小宵(Vo)、KYOTOU O-EⒶST SHIBUYⒶ(Gt)、ヨシキ(Gt)、MiNT(Ba)、634(Drs)の5人組。その内、小宵とKYOTOU O-EⒶST SHIBUYⒶの2名がVtuberという異色の構成だ。2022年4月に1st EP『人魚の骨』、同年10月に1st Album『七日目の街』をリリースし、また2022年5月にはおやすみホログラム主催のライブ「打奏驚蛇」に出演、同年12月にはレコ発ライブ「七日目のパレード」を主催するなど、ステージパフォーマンスにも力を入れており、破壊的な演奏が評価されている。最近ではASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文がホストのpodcast AVMTのVOL.36にて1st Album 所収「安息日」が週のプレイリストに選曲されるなど、その存在感はあらゆる音楽シーンにおいて日々いや増しつつあり、今後も決して目が離せない。

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