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【解説 - Silly BOY (ONE VINYL BEATS)】
この楽曲は、NEGEROとfujisamplerによる「音が繋いだ対話」をテーマにした一曲だ。
全体を通して繰り返される「FからN NからF」というフレーズは、ふたりの名前を示すワードであり、同時に“音のキャッチボール”を象徴するモチーフになっている。ビートがラップを呼び、ラップが新たなビートを生み出す。その循環そのものを、ループのように刻んでいく構成だ。
NEGEROのヴァースでは、彼のリアリティとユーモアが自然に溶け合っている。「ライフワークバランスを捨てる なんて以前から 社畜の文学」というラインからは、社会の枠組みに収まりきらない“HIPHOPに生きる人間”としての視点が伝わってくる。彼にとってラップは労働でも趣味でもなく、ほとんど存在意義に近い。テンションの高まりをそのまま言葉に変換するような描写からは、音楽に没頭したときの高揚感が鮮やかに浮かび上がる。「どこから抜き取る 人生サンプラー」というラインはとくに象徴的で、NEGEROが日々の出来事や葛藤すらHIPHOPにしてしまう存在であることがわかる。
現実の不満や苦労を避けるのではなく、それさえも音楽へと変換する姿勢が、独自の世界観を形づくっている。
それに続く fujisampler のパートでは、NEGEROの熱量に応答するように展開される。「1枚のバイナルが導く波動」というラインは、ビートが生まれ、ラップと同期し、互いのスタイルが反応して新しいものが生まれる。そんなプロセスが丁寧に表現されている。
「アイデア芽生えたなら即行動 その結果がこれミラクルコラボ」という部分は、まさにこの曲の制作背景を思わせるラインだ。
勢いと直感を大切にし、おもろいことやってたら作品になった。という、HIPHOP特有のストリート精神を感じる。
「この旗の下に集えよ『オモロ』」というフレーズは、ふたりが目指すHIPHOPの姿勢を象徴しており、カッコつけるよりまず楽しむこと、そしてオリジナリティを大切にするという決意表明のようにも聞こえる。さらに「ラップよ連鎖しろポジティブ未来図」というラインは、fujisamplerが思い描く“HIPHOPの理想の未来”を感じさせる。
アウトロでは、NEGEROとfujisamplerが1行ずつ応答する掛け合い形式をとり、まるで本当に会話しているかのようだ。
「(F)蓄積されたフジの交渉術」「(N)ネゲロと言われれば歌で答える」、そして「言葉が交われば分かり合える」「軌跡があるからこそ今がある」という部分からは、お互いへのリスペクトがしっかりと読み取れる。
最後の「1足す1以上の2MC 開幕!!」は、ふたりが組むことで生まれる化学反応が、単なる足し算ではなく掛け算のエネルギーになっていることを象徴する一行だ。
この曲の魅力は、NEGEROとfujisamplerの個性が繋がりとして自然に提示されている点にある。
互いに刺激し合いながら作品を形にしていくその過程が、曲そのもののテーマとして、音と言葉に刻み込まれているのだ。
「FからN NからF」というフレーズは、単に名前の頭文字を示すだけでなく、この曲で描かれる創作の循環を象徴している。
音楽はひとりで完結するのではなく、誰かのビートが誰かのラップを呼び、また新たなアクションを生み出す。
ふたりのコラボレーションは、まさに“HIPHOPの本質”そのものを体現していると言えるだろう。
ビートが繋ぎ、言葉が広げ、再びビートへ戻る。
そんなループが未来へと続いていくような、遊び心とリアルが共存する一曲だ。
静岡のEast-Sideで自由にラップするビートメイカー ポジティブなHipHop文化とboombapビートを愛し、 思い立ったら何でも自分で創っちゃう静岡のビートメイカー。 主にSP-404mk2、FL Studioでビートを創っています。 代表曲は世界初の古畑任三郎をテーマにしたラップ「Old Field」