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8月の中旬に私は新しいスタジオに引っ越してきた、このアパートは陽当たりは悪いが、閑静で静かな場所だ。
スタジオに使用している部屋だけが建物から突出しており、音量も快適に出せる。素晴らしく集中できる良い環境のようだ。
隣の建物に住んでいる老人の体操の掛け声と、夕飯時の食事の匂いが立ち込めてくることくらいが、少し苦痛なだけだ。
常に隣人の気配を感じるというのは都会ではたまにあることで、江戸時代の下町のようで良いのかもしれない。
先月に『Void XXIII』をリリースしたばかりなのっだが、新しいスタジオに移ったこともあり制作の意欲は十分だった。
一ヶ月で新しいアルバムを準備するのはかなりの挑戦だったのだが、幸いミックスと編集に十分な時間を確保することが出来た。
前作の『Void XXIII』では、ギターの演奏をライブのように録音して、そこに編集を加えていくという手法がコンセプトだったが、
今作では違ったアプローチを採用した。最近のギター演奏の録音や、2019年、2020年のストックしてあったギターの録音のファイルを
Reaktorというソフトウェアで編集や加工したものをベースにその上に新たにギターの演奏やシンセ、ベースなどをオーヴァーダビングしていった。
この手法は2015年くらいまでの私の主な作曲方法だったのが、その時期にはその手法に限界を感じ、モジュラーシンセやギターのライブ演奏にシフトしていったのだった。
しかしそれから時は経過し、再びReaktorが私の前にフレッシュなものとして出現した。
過去の録音や、最新の録音を重ねていくことで、このアルバムには時間の経過や過去の自分との対話という側面が加わった。コロナのパンデミックの中で
スタジオにいる時間が長くなり、友人達との対話より、自分自身との対話の方が長くなってしまったような気もするが、このアルバムにはそんな時代の空気が刻印されているように感じる。