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最後の一皿のカレーを、
男は静かに見つめていた。
冷蔵庫には何もない。
明日の不安は、雨雲みたいに重い。
それでも彼は、
銀のスプーンを剣のように握りしめる。
「これは、今日を生き抜いた証だ」
誰にも渡さない。
深夜の誘惑にも、
突然来た友人にも。
湯気の向こうで、
黄金色のルーは静かに光っている。
守るべきものなんて、
案外こんな匂いをしているのかもしれない。
昔、人は火を手に入れた。 やがて鉄を知り、空を飛び、 ついには星を見上げるまでになった。 だが―― 便利になった世界で、 人の心は少し迷っている。 地球は熱を帯び、 争いはまだ終わらず、 街の灯りの中で ひとり静かに生きる者もいる。 強くなることは出来た。 だが、優しくなることは まだ途中なのかもしれない。 いま人類に問われているのは、 どこまで行けるかじゃない。 どんな世界を残すのか。