人形狂いの廃屋のジャケット写真

人形狂いの廃屋

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トラックリスト

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村はずれに、一軒の廃屋がある。
古びた瓦は崩れ、窓は紙のように破れ落ち、夜になると必ず軋む音が聞こえる。
そこにはかつて、無数の人形が住みついていたと言われていた。

誰が置いたのか、なぜ増え続けるのかは誰も知らない。
気がつけば、座敷や廊下、天井裏にまで人形が溢れ、屋敷を埋め尽くしていたという。
目を合わせると、吸い込まれるような感覚に襲われ、やがて帰って来た者はいなかった。

ある晩、肝試しと称して数人の若者が廃屋に入った。
懐中電灯を頼りに進むと、足元に古びた雛人形が転がっていた。
頭が外れ、首から覗く闇は、まるで底なしの井戸のように深かった。

「……今、笑ったか?」
一人が振り返ると、背後には人影が立っていた。
それは人ではなかった。顔の造形が歪み、手足は木でできたかのように硬直している。
そしてその目は──確かに先ほどの雛人形と同じガラス玉の光を宿していた。

逃げ出そうと振り返ったとき、廊下はもう廊下ではなくなっていた。
無数の人形が壁を覆い、天井からぶら下がり、笑いながらこちらを見下ろしている。
息を飲む間もなく、闇の奥から“徘徊者”が歩み寄ってくる。

人形に支配された廃屋の主。
その眼光は獲物を逃さぬ犬のようであり、口から洩れる声は演歌の節回しのように震えていた。
「どこへ行こうとも、逃さぬぞ……お前も人形にしてやろう」

若者たちの叫び声は、外の夜風にかき消された。
やがて廃屋から聞こえてきたのは、すすり泣きとも歌声ともつかぬ旋律だったという。

村人たちはその夜から決して近づかなくなった。
「人形の廃屋に入れば、拳の効いた声で呼ばれる」──
それが、恐ろしくも哀しい“オカルティック演歌”の始まりだった。

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