桜舞いし刹那のステージのジャケット写真

桜舞いし刹那のステージ

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トラックリスト

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舞台の幕が上がるたび、桜吹雪しえりは必ず、深く一礼してからマイクを握る。
ライトの熱と観客のざわめきが混ざり合う中、彼女の視線はいつもまっすぐ前を見据えている。

しえりが初めて歌ったのは、小さな港町の夜店の舞台だった。
客は酔っ払いばかり、誰も真剣に聴いてはいなかった。
それでも、彼女は歌った。
雨に濡れた泥道に足を取られながらも、声を震わせ、泥の上に花を咲かせるように。

その姿を見て、人は彼女を“ハスの歌姫”と呼んだ。
泥に沈みながらも美しく咲く花──その生き様が、彼女そのものだった。

年月が経ち、演歌界とロック界の狭間で生きる彼女の存在は、異端と呼ばれた。
演歌には激しすぎ、ロックには情が深すぎる。
だが彼女は笑って言った。
「私は私の歌を、魂で歌うだけです」

桜吹雪の舞う夜、彼女は新曲『ハスに浮きてウテナ』を披露した。
舞台にはギターの唸りと和太鼓の重低音。
彼女の声が放たれた瞬間、会場全体が息を呑んだ。
それはもはや音楽ではなく、祈りだった。

歌はこう語っていた。
──泥の中でも、美しく咲け。
──誰に笑われようと、自分の信じた音を貫け。

最後の一節を歌い終えたとき、舞台に一陣の風が吹き、桜の花びらが舞い散った。
その光景を見て、観客の多くが涙をこぼした。
それは悲しみの涙ではない。
しえりが放った魂の声が、心の奥に届いた証だった。

そしてステージの灯が落ちる瞬間、彼女は静かに呟いた。

「ウテナとは、蓮の台。
 この歌は、泥の底で生きるみんなへの花なんです──。」

その夜、彼女の歌声は街を越え、風に乗ってどこまでも響いた。
まるで夜空に浮かぶ一輪の蓮が、闇を照らすように。

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