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「真空管のかぐや姫」は、竹取物語のその後を、レトロフューチャーな音像で静かに描いた一曲だ。舞台は月の館。真空管の灯りが揺れる庭で、かぐや姫は“この場所を守るため”に地上へ帰れず、受信機の向こうから届くおじいさまとおばあさまの声に耳を澄ませる。昔話の余白に、昭和の電子機器のぬくもりと、宇宙の孤独を重ねた幻想的な作品である。
サウンドは、柔らかなエレクトリックピアノ、 muted bass、 brushed kit を基調に、月明かりのようなシンセの残響を重ねた、きわめて繊細なチルアウト志向。派手な展開や大きな高揚を避け、息の近い囁き声が、真空管の熱、ガラスの透明感、通信機の微かなノイズと溶け合っていく。ニューエイジ的な浮遊感と、映画音楽のような情景喚起力を併せ持ちながら、J-Pop的な物語性も確かに宿している。
歌詞の核にあるのは、「帰りたい、でも帰れない」という抑えた切なさだ。地球は見えているのに届かない。声は届くのに会えない。その距離感が、昔話のかぐや姫に新しい感情の輪郭を与えている。囲炉裏端の笑い声、竹の風の音、書きかけの返事、灯を守る夜。ひとつひとつの情景が、派手さではなく余韻で胸に残る。
古典モチーフ、和の気配、昭和レトロな真空管の美意識、そしてSF的な月世界観。その異質な要素を無理なく溶かし合わせ、聴き手を“静かな物語の内部”へ連れていく点が、この曲の最大の魅力だろう。眠る前の一曲としても、映像を思い浮かべながら浸る一曲としても機能する。ノスタルジアと未来感、郷愁と使命感、その両方をやわらかく抱えた、儚くも美しい月夜の通信歌。
グレちゃん(Gre-chan)は、エレクトロニックを軸に、J-Pop、8-bitロック、シティポップ、EDM、メタル、ワールドミュージックまで横断するジャンルミックス型ポップアイドル。 「グレちゃんの毎日コーデ」で見せたファッションと日常のポップな世界観を起点に、通勤や通知の嵐をゲーム化した「脳内アーケード」、サイバーパンクな崩壊と再生を描く『Overwrite to the Future』、都会の夜を踊らせる「銀座ステップで捕まえて」など、映像が浮かぶ物語性の強い楽曲を展開している。 かわいさ、レトロフューチャー、スピード感、ダークな世界観を行き来しながら、日常も空想もステージに変えていくポップアーティスト。