声にならない夜

この曲は、もう二度と戻らない時間と、消えていく愛しい人の記憶を追いかけ続ける主人公の心情を描いています。舞台は、崩れ落ちた都市の片隅、冷たい月明かりに照らされた廃墟の中。静寂を切り裂く風の音と、かすかな足音だけが響く夜。かつてそこにあった温もりは、触れようとすればするほど幻となり、闇の中へと溶けていきます。

現実と記憶が交差する情景の中で、主人公は失われた時間の迷路をさまよい、胸を締め付けるような痛みと、それでも手放せない想いを抱き続けます。届かない声と遠ざかる存在に向かって必死に叫ぶ切なさが、静寂の中で響き渡ります。

やがて、「たとえ偽りでもいいからもう一度会いたい」という願いが鮮明になり、感情は静かに、しかし確実に燃え上がります。最後には、壊れても構わない覚悟と、それでも変わらず待ち続ける決意が夜に溶け、深い余韻を残します。

鋭い情景描写とバラードならではの深い情緒が融合し、音と言葉が一体となって強い世界観を放つ楽曲です。