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むかしむかし、エルデンフォレストと呼ばれる深い森があった。
その森の外れに、赤いずきんをかぶった少女が住んでいた。少女の名はミア。年は十四ほどで、祖母のローザと二人きりで静かに暮らしていた。
エルデンフォレストには狩人たちの村があり、村では昔からある物語が語り継がれていた。
赤ずきんの少女アイリスが狼に食べられ、狼は狩人に討たれたという話だ。
村の子どもたちは皆、その話を聞いて育ち、狼は恐ろしい存在だと教え込まれていた。
ミアもまた赤ずきんをかぶっていたが、村の人々とは距離を置いていた。
彼女が心から信頼している存在は、たった一匹のオオカミだけだった。
フォレストと名付けられたそのオオカミは、ミアが幼い頃から共に育った友だちだった。
ある日、メアリー、リリー、ピーターという狩人の子どもたちが、泉に水を汲みに来た。
そこで彼らは、信じられない光景を目にする。
赤ずきんの少女が、オオカミと並んで立っていたのだ。
三人は恐怖で動けなくなった。
しかしミアは微笑み、フォレストは静かに尻尾を振っていた。
ミアは優しい声で言った。
大丈夫、この子は噛まないわ。私の大切な友だちなの。
恐る恐る近づいたリリーがフォレストに触れると、その毛は温かく、柔らかかった。
三人は戸惑いながらも、これまで教えられてきた話と、目の前の現実が違うことに気づき始めた。
その日から、子どもたちは秘密を守りながら、森の外れの家を訪れるようになった。
ローザの家には、大きな古い鏡があった。
ミアはよくその鏡の前に座り、自分の顔を見つめていた。
鏡に映る自分は、いつも少し不安そうだった。
フォレストが狩人に見つかったらどうなるのか。
その恐怖は、ミアの心から消えることはなかった。
ローザは語った。
この鏡は、かつてここに住んでいた姉アイリスの形見だという。
アイリスもまた、狼と共に生きていた。
しかし狩人たちはその狼を討ち、物語を作り替えた。
狼は悪で、狩るべき存在だと。
アイリスは病で亡くなったが、その心は最後まで折れていた。
だからローザは、この鏡を守り神として残したのだ。
数週間後、村で狼の足跡が見つかった。
狩人たちの棟梁は罠を張るよう命じ、村は緊張に包まれた。
その噂はすぐに子どもたちの耳にも届いた。
ミアは家から出なくなり、毎日鏡の前に座った。
怖い。逃げたい。でも、どこへ行けばいいのかわからない。
鏡は何も答えず、ただミアの不安を映すだけだった。
ある日、家の外から低い声が響いた。
狩人たちが調査に来たのだ。
ミアは震える手でフォレストを抱きしめ、奥の部屋へ隠した。
家の中を調べる足音が近づき、遠ざかり、やがて消えた。
何も見つからなかったのだ。
扉が閉まったあと、ミアはその場に崩れ落ちた。
鏡には、涙を流す少女の姿が映っていた。
ミアはそっと鏡に触れた。
守ってくれたのかもしれない。
そう感じた。
フォレストは静かにミアのそばに寄り添っていた。
まだ何も終わっていない。
けれど、ミアは知っていた。
恐怖の中でも、誰かと共に生きる選択だけは、決して間違いではないということを。
鏡は黙ったまま、二人の姿を映し続けていた。
かがみの向こうの赤ずきんのメインキャラクターのミアです。オオカミのフォレストとは幼い頃からの仲良しです。いつかフォレストと一緒に暮らすことを夢みて今日も薬草から軟膏作りに勤しみます。