Lyric

赤い月満ちる時

魔物は柩を出る

風化した墓石には

忘れ去られた誰かの名

水のように血を飲み

幾人を喰らえども

満たされることはなく

闇夜に吠えた 吸血鬼

矮小な者よ 刃を手に踊れば

呪えよ 己の愚かさを

冷血を啜り 深く突き刺すは

夜を裂いた 緋色の眼光

伸ばす腕は 欲望に塗れ

死の舞踏へと誘う

幽閉の森 閉ざされた闇

寂寞に朽ちた檻の中で

吹けば消えゆく 灯ならば

私の哀れな糧となれ

赤い月満ちる時

それは悲劇の合図

繰り返す上演に

鳴りやまない亡者の声

抗いし者よ 共に待ち焦がれよう

等しく訪れる裁きを

捕らわれた屍(かばね) 零れ滴るは

泥に濡れた 紅玉の雫

握り締めて 手中で砕けた

脆き器(グラス)の残響

いつか潰える 美しさなら

生の証を迸らせて

命の香り 微かに残る

鮮血の美酒に溺れ 酔え

たとえこの身体 魂もろとも

鉄の杭が 貫いたとして

もう二度と 土には還れず

戦ぐ風に 朽ち果てるだろう

切なさを 感じられたなら

愛おしさを 思い出せたなら

甘美なる 理に沈み

終焉を迎えよう

狂おしいほどに 求め彷徨うは

濁りのない 真実の雫

藻掻くことも 叶わぬ肢体を

流れ続ける体温

やがてその身も 時の獣に

爪を立てられる定めならば

私の牙に 全てを捧げ

無垢なまま真紅に咲き 散れ