

下北沢の 乗り換え口で
財布の隅の 束をひらく
ミシン目ひとつ 指でなぞって
一枚だけを 細く切り取る
改札を抜ける 硬い音ひとつ
金曜ごとの 句読点になる
古道具屋の灯 時計が並ぶ
あなたの指が 針を戻してる
ミシン目を切れば 一枚軽い
会いにゆくたび 束は薄い
減ってゆくのに 足りないなんて
この指だけが 残りを数える
財布の奥で 束が頼りない
あと数枚で 終わる細さに
売り場はすぐそこ 買い足せばいい
なのに窓口 通り過ぎてた
昔の町では 名前のかわりに
「誰の娘」と 呼ばれて育った
だから名前を つけずにおくの
続くとは言わず 今日も切るだけ
ミシン目の白い縁 残りわずか
切り取るたびに 終わりが近い
でも買い足さない 今日はこのまま
最後の一枚 まだ切らずにおく
「また来ていい」とは 言えないままで
改札の外へ ひとり抜けて
財布の底に 最後の一枚
角のやわらかい 白いミシン目
- 作詞者
Akemi
- 作曲者
Akemi
- プロデューサー
nanayon music
- ミキシングエンジニア
nanayon music
- ボーカル
Akemi

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回数券のアンダンテ
Akemi
「回数券のアンダンテ」は、会いに行くたびに一枚を切り、近づくほどに束が薄くなっていく関係を、綴りの回数券に重ねて描いたミディアムテンポのシティポップ。
下北沢の乗り換え改札、指でなぞるミシン目、細く切り取る一枚、古道具屋に並ぶ時計、そして通り過ぎる売り場の窓口――親密さと有限性が同じ動作の中で進んでいく金曜の夜を静かに浮かび上がらせる。
架空のAIシンガー Akemi が歌うのは、続けたいと思いながらも、束を買い足すこと=関係に名前をつけることを避け、続けるとは口にせず自分で回数を決める側に立つ大人の感情。
70年代後半から80年代初頭のニューミュージックやシティポップが持っていた、都会の夕暮れ、駅と車窓、名前を持たない関係の距離感を描く叙情性を下敷きに、現代的な感性で再構築した一曲となっている。
最後から二枚目を切ったとき、束の薄さが指に伝わり、近づくほどに回数が減るという矛盾を体が知る。
「また来ていい」とは言わずに最後の一枚だけは切らずに財布へ戻す――そんな距離の縮まりと、保留を自分で選ぶ静けさを描いた楽曲。
Produced by nanayon music.
アーティスト情報
Akemi
1970年代後半〜80年代前半の「シティポップ/ニューミュージック」が持つ哀愁と夜の空気感を、生成AIと編集で“作品として”再構築する音楽プロジェクト。 Akemi(アケミ)は、神奈川県大和市出身という設定で生まれた架空のAIシンガー。都会の孤独、大人の恋、夜の感情を、ノワール調のシティポップとして歌う。 作詞・作曲・歌唱・ビジュアルは生成AIを制作ツールとして用いながら制作し、「AIの中にある人間味と懐かしさ」をテーマに探求している。
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nanayon music



