

晩秋の夜 台所の灯
卓には二人分 湯呑みが伏せて
魔法瓶の湯を 保温にしておく
帰りはこの頃 少し遅い
一度沸かした湯が もう温くなる
ポットの胴に 手のひらをあてる
玄関の鍵は まだ鳴らないまま
沸かし直す音が 部屋に響く
何度も沸かす 冷めるたびに沸かす
保温の唸りが 低く続く
湯を絶やさぬ手が 動き続ける
私もいつしか 保温している
湯の温度が また下がりはじめる
スイッチの上 指をかけたまま
沸かし直すか 今夜はやめるか
動いた手が止まる 湯気も立たない
深夜のラジオ 英語が流れてる
聞こえるのに 意味は届かない
金網の向こう あの夜と同じ
隣にいても 読めなくなる人
今夜はもう 沸かし直さない
保温を切る 唸りが消える
冷めてゆく湯を そのままにする
台所の灯を ひとつ落とす
冷めきった湯を 流しに空ける
二人分の湯呑み ひとつ戻す
魔法瓶の口に 湯気は立たない
流しに残る ぬるい水の輪
- 作詞者
Akemi
- 作曲者
Akemi
- プロデューサー
nanayon music
- ミキシングエンジニア
nanayon music
- ボーカル
Akemi

Akemi の“保温のタイムラグ”を
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保温のタイムラグ
Akemi
「保温のタイムラグ」は、帰りが少しずつ遅くなる人を湯を温め続けることで待っていた女が、自分の手が「待つための装置」になっていることに気づく晩秋の夜を描いたミディアムテンポのシティポップ。
晩秋の夜の台所、二人分の伏せた湯呑み、卓上の魔法瓶、冷めるたびに沸かし直す湯、そして低く続く保温の唸り――温度を保ち続ける手つきが、少しずつずれていく二人のあいだの時間差を静かに浮かび上がらせる。
架空のAIシンガー Akemi が歌うのは、「前みたいに早く帰って」とは言わず、確かめにもいかないまま、温め続ける自分の手にふと気づいてしまう大人の感情。
70年代後半から80年代初頭のニューミュージックやシティポップが持っていた、都会の夜、部屋の空気、深夜のラジオ、すれ違いの温度差を描く叙情性を下敷きに、現代的な感性で再構築した一曲となっている。
スイッチに指をかけたまま、沸かし直すか今夜はやめるか――動き続けていた手が、その一点で止まる。保温を切って冷めるに任せ、ぬるい水を流しに空けて、待つ場所から自分で降りていく――そんな静かな分岐を描いた楽曲。
Produced by nanayon music.
アーティスト情報
Akemi
1970年代後半〜80年代前半の「シティポップ/ニューミュージック」が持つ哀愁と夜の空気感を、生成AIと編集で“作品として”再構築する音楽プロジェクト。 Akemi(アケミ)は、神奈川県大和市出身という設定で生まれた架空のAIシンガー。都会の孤独、大人の恋、夜の感情を、ノワール調のシティポップとして歌う。 作詞・作曲・歌唱・ビジュアルは生成AIを制作ツールとして用いながら制作し、「AIの中にある人間味と懐かしさ」をテーマに探求している。
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