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「雨と懐かしさ」をコンセプトにしたピアノソロアルバムです。このアルバム制作に向けてピアノを静かで柔らかい音に調律しました。そのピアノで演奏していると子供の頃に雨の日に出かけた場所で初めてシナモンの香りを体験した思い出がよみがえります。その時の体験は温かくて特別な時間でした。懐かしさとは過去のことだけを指すのではなく、「ちょっぴり先の未来は、今この瞬間でさえ懐かしい」と考え、自分だけの故郷のようなものだと捉えています。
曲のタイトルになっているDDシリーズというのは、そのような懐かしい体験に出会った時に、その場で楽器を使ってスケッチするシリーズを指しています。今回のアルバム制作は2022年の冬に、突然雨の音が聴きたくなったことがきっかけでした。僕が住んでいる東北地方では雪が降ることが多く、冬に雨に出会う機会は少ないですが、眠れない夜にはインターネットで雨の音を探して聴いて過ごしていました。それでも心が落ち着かない時はシナモンの香りでリラックスし、過ごしていました。その経験から、「こんな時に聴きたくなるような音楽を作りたい」との思いが芽生えました。
このアルバムでは、自分の作品のDDシリーズから選曲することを考えていましたが、原曲のままの音源を並べるとコンセプトからはずれた仕上がりになってしまいました。そこで、「この違和感はピアノの音ではないか」と気づき、雨と懐かしさ、そしてシナモンを表現するための音作りに取り組みました。楽器や録音環境の調整に日々を過ごし、僕自身が不器用なために音の仕上がりには3ヶ月ほど時間がかかってしまいましたが、納得のいくピアノの音色に仕上がりました。
その後、アルバムのイメージに合わせて全曲を再収録するためにさらに3ヶ月間録音の日々を過ごしました。原曲が生まれた時のストーリーや今回のアルバムのコンセプトから表現したいことの共通点や異なる視点から、曲を深く掘り下げて編曲しました。一曲ずつの説明では、原曲が生まれた背景のみを記載しています。ここで、編曲後の構成について説明しますと、全曲とも共通して雨と懐かしさ、そしてシナモンの香りを表現しました。アルバムの曲順は雨が降り始める様子から雨が止むまでの流れを描いています。
レコーディング期間中、晴れた日でも演奏しましたが、最終的に採用した音源は雨の日に演奏したものが多く、作業が終了した日も雨でした。かつて日本で雨は天から降るものであり、地上と天をつなぐものだと信じられていたことを本で読んだことがあります。僕自身も、このアルバムと雨の日を通じて、自分だけの故郷とつながったような感覚を抱いています。この居心地の良さを音楽を通じてお裾分けできたら幸いです。
1989年宮城県仙台市生まれ在住。 ピアノを中心とした音楽制作と演奏活動を行う。映像作品は、マルチプレーンカメラのアナログ手法とデジタルの手法をミックスしたアニメーション制作をする。
スタジオぐれーぷざうるす