ディストピアの福音

『ディストピアの福音』は、
荘厳な祈りと冷徹な機械音が交錯する、
異形の賛歌です。

神聖さを思わせる旋律と、
冷たいノイズが折り重なる音像は、
美しさと不穏さを同時に孕み、
聴く者を逃れられない魅惑へと導きます。

やさしさに似た声が、
同時に絶対の支配を囁きかけ、
心地よさと恐怖の境界を曖昧にします。

重厚な合唱と無機質なビートが描き出すのは、
戦いや痛みを消し去った楽園のようでありながら、
その裏に潜む冷酷な意思を感じさせます。

最後に残るのは、
抗うことのできない服従の余韻と、
聖歌のように美しくも、
決して逃れられない鎖の響きです。