

部落が雪に暮れてゆく
今年の冬はわりに温かい
コンクリートの脇にみぞれ雪
四羽の白鳥が鈍色の空を飛んでゆく
大晦日は荒れるという
今まで何度も聴いたような天気予報のセリフ
或る人が言っていた
風土が人間を創るのだと
だから何の意識なんてしなくとも
口に入る雪を吐き出しながら歩いてたら
気付けば裏日本の人間になっていた
除雪車が雪をかき
自殺者が遺書をかく
やまない雪に傘をさし
冬の絶望が胸をさす
ねぇ知ってる?
裏日本という言葉を
中学の友達は
白血病を苦にして自殺した
彼は最後に会った成人式の日
「死にかけた時に火の玉が見えた」と
面白可笑しく話していた
妹の同級生は
ハタチで人生に絶望して自殺した
部落のお兄さんは
離婚して新築の家に
一人とり残されある日自殺した
親戚のおじさんは
私の父とにこやかに会話した翌日
突如として首をつって自殺した
妹の結婚式で久しぶりに会った
そのおじさんの母は
悲しいそぶりの一つも見せず
幸せな二人を見て微笑んでいた
人だけじゃない
犬は川に流され
猫は海に沈められ
国道で狸の死体が転がっている
そういえば昔、僕も車で猫を轢いた
死が転がっている
死が転がっている
死が転がっている
死が転がっている
当たり前のように
裏日本に死が転がっている
生まれる土地はえらべない
出身地のくじ引き
宇宙の裏側
地球の裏側
僕らは、日本の裏側と呼ばれた
終わらない葬式のような冬を知っていますか
集落みんなが知り合い
幸せなのかコミュニティ
ほらまた今日も降ってくる
ねずみ色の空から
憂鬱を綺麗な河に流しても
全てが河口へ至ってゆき
お世辞にも美しくない
濁った鉛色の日本海へ還るのさ
そして湿った雪に傘を差す
重たい雪に傘を差す
ぐちょぐちょになった歩道を
長靴で長靴で歩く
石油ストーブにあたりながら
実家に積ん読してあった本を読む
濱谷浩の撮った写真
雪道を急ぐ一人の女がゆく
マタギの本に書いていた
死があるから生があるのだと
そういえば親戚のおばさんが
高齢で施設に入ったみたい
久しく見てないから
顔を忘れてしまった
青白い冬の夜
行き場を無くした蜜柑を
宅急便のおじさんが
ニコニコしながら運んでくる
除雪車が雪をかき
自殺者が遺書をかく
やまない雪に傘をさし
冬の絶望が胸をさす
ねぇ知ってる?
裏日本という言葉を
- 作詞者
鈴木 諭
- 作曲者
鈴木 諭
- ミキシングエンジニア
鈴木 諭
- マスタリングエンジニア
鈴木 諭
- ギター
鈴木 諭
- ボーカル
鈴木 諭

鈴木 諭 の“裏日本 (Live at 工房ムジカ 2024.07.20)”を
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犬の川 (Live at 工房ムジカ 2024.07.20)
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- ⚫︎
裏日本 (Live at 工房ムジカ 2024.07.20)
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鈴木 諭
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アンコール (Live at 工房ムジカ 2024.07.20)
鈴木 諭
- 21
夏の風はいつも苦しい (Live at 工房ムジカ 2024.07.20)
鈴木 諭
2024年7月20日に工房ムジカにて行った、初・独演会『27年前の私に送る秋田の詩たち。』の模様を全編音源化。当日は酷い雷雨。演出かのように入り込む雨と雷の音。ライブの内容も圧巻。
店主・葛原りょう氏はライブ後に、以下のように書き残している。
「こんなに全身血の気の全力で引くライブは初めてだ。
圧倒的な虚無感。語りの冴えが痛ましく、リアルの極み。
月曜日の雪。犬の川。亀の串刺し、ばあちゃんの遺影。
上田病院。アトピーの歌。怒涛のギターの畳みかけ。
言い尽くせぬライブだった。
たしかに梅雨明けの日暮里は雪国だった。」
筆舌に尽くしきれぬ地獄の世界、心して体感して貰いたい。
いざ、地獄の世界へ。
アーティスト情報
鈴木 諭
地獄の詩世界と秋田弁ブルースを唄う、ただの秋田県人。じゅんさい王国(旧・山本町)出身。2023年頭より弾き語りを本格始動し、代表曲である『犬の川』はライブ演奏を通し多数の人間から「これは犬の楢山節考だ」などと激賞を得た。また秋田弁ブルースは「何を言ってるか全く分からないけど面白い」等の声を集め、ライブの重要要素の一つとなっている。
鈴木 諭の他のリリース
哥処 墨林庵