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「身体は限界を迎えているのに、脳だけが高速で回転を続ける不眠症の夜」の解離感を、引き算の美学を突き詰めた極限の音響設計でパッケージングした、BPM76(Aマイナー・エーオリアン)のミニマリスト・リズム・エレクトロニック・ポップです。楽曲の核となるのは、心臓の重い鼓動を模して鈍く鳴り響くフロアタム(身体のテンポ)と、それとは全く独立して脳内の焦燥感を体現するように超高速で刻まれる「倍速ハイハット(Double-speed hi-hat)」のパラドックス。そこにシンコペーションを刻む16分音符のライドシンバルが加わることで、静的な佇まいの中に神経質な摩擦を生み出しています。
楽器構成は、重低音のルート音を不気味に保持するベースラインと、遠くで歪む半分忘れた記憶のようなデチューンされたシンセ・ループのみ。ローファイ・ヒップホップのような安易な癒やしや、ドリーム・ポップ的な甘い逃避の霧(ヘイズ)を徹底的に排除し、どこまでも平熱の、しかし張り詰めた空間を維持しています。ボーカルは、マイクから20インチ(約50cm)の距離で捉えられた、驚くほど滑舌が精密(ハイパー・プレサイズ)な男性のバリトン・リード。サビ(コーラス)を迎えるたびに、シンセ、ベース、フロアタムと、1つのシステム層ごとに音が消え去っていく「逐次的な引き算のアーキテクチャ(Sequential subtraction)」を敢行。最後は声と、神経質に時を刻み続けるハイハットだけになり、言葉が途切れたのち、ハイハットの機械的なクリックが16分音符の途中でスパッと完全な真空の静寂へと遮断される幕切れが、解決も救いもないリアルな現代の夜を脳裏に焼き付けます。
Negi0723は、感情の揺らぎと都市の空気感を繊細にすくい取るミュージシャン。 エレクトロニックとポップ、オルタナティブの要素を横断しながら、 きらめきとノスタルジー、衝動と内省が共存するサウンドを描き出す。 印象的なメロディと映像的なリリックが特徴で、 一瞬の感情や夜の断片を切り取るような楽曲世界は、 リスナーそれぞれの記憶や物語と静かに共鳴していく。 ジャンルに縛られず、感覚を信じて音を紡ぐ。 Negi0723の音楽は、日常と非日常の境界線をやさしく溶かしていく。