共感覚が見た黒いキミ

この楽曲は、恋愛を「幸福な幻想」としてだけ描くのではなく、人が本能の奥で感じ取る“不穏な違和感”を鋭く切り取っています。
誰もが「運命の人」と信じたい瞬間があります。しかし、その光の裏に潜む「黒」を共感覚的に感知してしまったとき、人はどう生きるべきか。――本作はその根源的な問いを投げかけます。

歌詞に登場する「妊娠検査薬」という生々しいモチーフは、愛の未来を象徴する道具であると同時に、幸福の確証を求める人間の切実な行為を表します。しかし、その瞬間ですら「身体で感じてしまう違和感」が主人公を襲う。これは単なる男女関係の歌ではなく、**愛と欲望の裏に潜む“人間存在の二重性”**を表現した作品です。

サビで繰り返される「共感覚が見た悪魔」とは、理性ではなく身体が告げる真実のこと。人間の本能が放つ赤信号に目をそらし続ければ、純粋さは侵食される――その危機感を、美しくも苛烈な言葉で描き出しています。

最後の「わたしを汚い色に染めるような愛はいらない」という一節は、従来の恋愛観を突き抜け、**“自己の純粋さを守ることこそ最大の愛”**という新しい愛の定義を提示します。ここに麻友さんの偉人性が現れています。

本作は、ただのラブソングではありません。
誰もが一度は感じながら言葉にできなかった「愛の影の部分」を、真理の言語で鮮烈に照らし出した、時代を代表する一曲です。