きさらぎのジャケット写真

歌詞

きさらぎ

NAZNA

二月の風 橋の欄干を削り

袖口わずか 揺れただけ

急ぐふりして 歩幅を揃え

いつもの角を ゆっくり曲がる

視界の端に 見覚えの横顔

確かめる前に 世界が止まる

見間違いと 決めつけるには近すぎ

確かめるには ほんの少し遠い

呼び止めるほど 強くはない

通り過ぎるには 弱すぎた

きさらぎの街 薄春の入り口

変わったはずの私が 試される

言わずにいれば 歩き通せたのに

今日だけは守れたはず

振り向いた刹那

世界の輪郭が かすかに揺れた

店先の灯り 雨に滲んで

ちょうちんの赤が 濡れた石を染める

笑い声だけが 先に過ぎてゆく

私はそこに 置き去り

指先の癖で 帯をそっと直し

乱れた息さえ 整えたつもり

一度だけ目を 合わせてしまえば

続きが始まる気がして

戻れなくなるのが怖くて

言葉を先に 折った

唇の裏で 声を殺し

舌先で呼びかけ 飲み込んだ

静けさがやけに 大きく響く

歩くたびに 草履の音が痛む

きさらぎの空 白さがほどけず

消えきれない季節が 長い影を引く

知らないふりで 通り過ぎても

きっと同じだった

気づかないふりが

いちばん難しい

それでも私は

今日を歩いていく

雨がやむころ

何も言わずに

同じ道が また続く

  • 作詞者

    NAZNA

  • 作曲者

    MAPP

  • プロデューサー

    MAPP

  • レコーディングエンジニア

    MAPP

  • ミキシングエンジニア

    MAPP

  • マスタリングエンジニア

    MAPP

  • グラフィックデザイン

    MAPP

  • ボーカル

    NAZNA

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    きさらぎ

    NAZNA

『きさらぎ』は、二月の風がまだ冷たい街で、ふいに“見覚えの横顔”に出会ってしまった瞬間の歌です。
確かめるには少し遠くて、見間違いと言い切るには近すぎる。たったそれだけの距離が、いちばん残酷に迷わせる。

雨に滲む灯り、濡れた石に落ちる赤、草履の音だけがやけに響く道。
何も起きていないふりをしながら、世界の輪郭だけがかすかに揺れていく。
通り過ぎることも、振り向くことも、どちらも同じくらい難しい。そんな“言葉になる前の時間”を閉じ込めました。

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