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大げさなストリングスの上昇や、胸を打つエモーショナルなメロディ、そしてスタジアム規模の壮大なロックアンセムの枠組みを徹底的に手放した、衝動的で愛すべきインディー・ポップです。「スーパーやコンビニで、ただ相手が袋を持って歩いているのを見かけただけ。それっぽっちのどうでもいい些細な日常の一コマを、脳内で勝手に大ごとにして『なぜ私はこうなんだろう』と一人で悶々とする、あの少し恥ずかしい自意識の暴走(socially embarrassing energy)」を、チープで不器用なベッドルーム・パンク(lo-fi bedroom punk)の質感にのせて淡々とスケッチしています。
最大の快楽は、完璧なプロのミキシング(professional mixing)や洗練されたスタジオワークを完全に拒絶し、宅録の生々しいエラーをあえて武器にした引き算の設計。伴奏を支えるのは、わずかにチューニングのズレた頼りないギター(slightly out of tune guitar)と、おもちゃのような安価なリズムボックス(cheap drum machine)。マイクの振動板に唇が圧着する2cmの超至近距離で捉えられた女性ボーカルは、歌うことを放棄した平熱の呟きから、サビ(コーラス)に突入した瞬間、声を張り上げる(epic build)ことなく、ステレオ幅が左右140%のパノラマへと全開放。「OKAY」という2文字の、頭を通さず口の形だけで覚えてしまう呪術的なフック(mouth-feel hook)へとノーモーションで決壊します。
リズムセクションには、グリッドからだらしなくヨレた手拍子(sloppy handclap)や、フレーズの合間にこぼれ落ちる本物の笑い声(laughing in background)が配置され、サビの最中に一拍だけ演奏が完全ストップする「無警告の静寂(sudden silence drops)」を敢行。中盤のブリッジでは、どうでもいいビニール袋の存在に対して不相応に生真面目なトーン(spoken, slightly too serious)で語り、長い沈黙のトラップ(long pause)を仕掛けたのち、わざとズレたタイミングでサビに突入するなど、計算された不完全さが聴き手を心地よく翻弄します。最後はドラマチックな終息に逃げることなく、演奏が完全に止まった真空の空間のなかで、自身のマぬけな行動に思わず吹き出した「okay」という最後の呟きの瞬間に、リミッターがゲートをプツンと遮断。残響を1ミリも残さずスパッと完全な静寂へと着地する、現代のミニマリズムを体現した大傑作トラックです。
Negi0723は、感情の揺らぎと都市の空気感を繊細にすくい取るミュージシャン。 エレクトロニックとポップ、オルタナティブの要素を横断しながら、 きらめきとノスタルジー、衝動と内省が共存するサウンドを描き出す。 印象的なメロディと映像的なリリックが特徴で、 一瞬の感情や夜の断片を切り取るような楽曲世界は、 リスナーそれぞれの記憶や物語と静かに共鳴していく。 ジャンルに縛られず、感覚を信じて音を紡ぐ。 Negi0723の音楽は、日常と非日常の境界線をやさしく溶かしていく。