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木星の雲海の奥に、もし密やかなシーシャバーがあったなら。
「木星のシーシャバー / Jupiter Shisha Bar」は、そんな空想を静かな音像に結晶させた、レトロフューチャーなスリープ・トラックだ。Slow ambient synthwave を基調にしながら、前へ前へと押し出すビートやドラマチックな展開はあえて封印。やわらかなアナログシンセの光、淡く滲むガラス質のパッド、深く沈んだベースライン、そして囁くように溶け込む女性ボーカルが、木星の重厚な縞模様の向こうに広がる“夜の避難所”を描いていく。
この曲の魅力は、派手な高揚ではなく、低い温度で持続する没入感にある。無重力の煙、古びたラウンジチェア、林檎の香りを含んだ吐息、窓の外でうねる大赤斑。そうしたイメージが言葉と音の境界を曖昧にしながら、聴き手を静かな宇宙旅行へ連れ出す。シーシャバーという異国的で退廃的なモチーフを扱いつつも、作品全体の手触りはあくまで柔らかく、孤独を刺激するのではなく、そっと薄めていく方向へ向かっているのが印象的だ。
睡眠用BGMとして設計された作品でありながら、ただ眠りを誘うだけでは終わらない。ここには、旅の途中にふと立ち寄る場所の気配がある。誰のものとも知れないぬくもり、名前を交わさないまま共有される短い安堵、そしてまた次の星へ向かうための静かな呼吸。その感覚を、過度な説明に頼らず、空気そのものとして聴かせる点に、この曲のセンスがある。
スペースエイジ・ポップやアンビエント、ニューエイジ、ドリーミーなシンセウェーブに惹かれるリスナーはもちろん、夜更けに情報量の少ない音楽を求める人にも勧めたい一曲。眠りの手前、あるいは感情を少しだけ無重力にしたい夜に、この木星の隠れ家は静かに灯るはずだ。
グレちゃん(Gre-chan)は、エレクトロニックを軸に、J-Pop、8-bitロック、シティポップ、EDM、メタル、ワールドミュージックまで横断するジャンルミックス型ポップアイドル。 「グレちゃんの毎日コーデ」で見せたファッションと日常のポップな世界観を起点に、通勤や通知の嵐をゲーム化した「脳内アーケード」、サイバーパンクな崩壊と再生を描く『Overwrite to the Future』、都会の夜を踊らせる「銀座ステップで捕まえて」など、映像が浮かぶ物語性の強い楽曲を展開している。 かわいさ、レトロフューチャー、スピード感、ダークな世界観を行き来しながら、日常も空想もステージに変えていくポップアーティスト。