書き溜めれば思い出す あの時のため息さえも平気な顔して
だいぶ先を走って行ったはず ウサギとカメ なら足の速いカメ
なぜか色褪せる事を知らない 色を持たない思い出が増える中
なぜか色褪せる事を知らない 色を持たない思い出が増える中
いつだっけ 後悔は早く忘れようとして 癖になって行って
嫌な事を早く忘れようとして 一緒に色を失って
振り返って 何があったっけ 懐かしいなんて思う頃
それが宝物になるなんて 誰か思ったっけ
きみを荒野だと思うことがある
かわいた皮膚の鎧のすきまから化石がのぞいているのを見つけたとき
ぼくはその埃をていねいにはらい
りっぱな標本に組みあげたくなる
しかしながらきみは
二本の手足と二メートルに満たないからだを持ち
それ以上むやみに拡がっていかない個体にすぎない
そこではじめて
ぼくはただきみにふれたかったのだ
と わかる
ぼくたちの水さしにはひとしく穴があいていて
どれだけ恵まれたとしても間もなく渇く
しかしなお 水さしは
誰かにそそいでやるためのかたちをしている
きみはやっぱりヒトなのだった
やさしさを使いはたし浴槽で涸れていく朝方
水さしはいつまでもあふれることはなく
ぼくたちはいつまでもやさしくはなれない
きみが永続すると思うことがある
からだは未来へ移動しつづけいつか風になっても
きみがいた という 過去形の響きだけが
きみはやっぱりヒトなのだった
二つの目をあけしめすることをくりかえし
やさしくなりたいと願わずにはいられない
並走するサイクリングロードはあの頃、
終わりを教えてはくれなかった
もう少し行けば隣を走る電車も駅に着くのに
もう少し行けばギアは最高速度なのに
もう少し行けば もう少し行けば
そのもう少しがあれから20年経っても
もう少しのままだった 埋まらない空白
振り返る度に美化された思い出は 無感情に感情を持たせ
白黒に色を持たせ 少なからず「あの頃は良かった」
なんて言葉に 金色を塗る
ぼくたちの水さしにはひとしく穴があいていて
どれだけ恵まれたとしても間もなく渇く
しかしなお
嘘と傷とため息が 小さな小川を流れて 大海原
これ聴いてどういう顔するかな?
今よりも 色を持つ思い出は 今にかなう事がないから
思い出の中で生きようとする 白黒の今が横目で流れて行く
誰しもそこに居ない卒業アルバムを掘り起こし
誰もうそこに居ない過去に目を通す
そこから先でどこを見ていいのか
今を見てもいいのか
それが今にしか もう居ない
金色に無理矢理に今を染めて
思い出を越える
思い出を越える しかない
ぼくたちの水さしには
ひとしく穴があいていて
どれだけ恵まれたとしても間もなく渇く
しかしなお 水さしは
ぼくたちの水さしには
ひとしく穴があいていて
どれだけ恵まれたとしても間もなく渇く
しかしなお 水さしは
誰かにそそいでやるためのかたちをしている
- Lyricist
Kujira Sakisaka, Kitsunebi
- Composer
Yuya Kumagai
Listen to The carafe with a crack (feat. Kitsunebi) by Anti-Trench
Streaming / Download
- 1
Prologue:the pulse
Anti-Trench
- 2
Lily of the valley
Anti-Trench
- ⚫︎
The carafe with a crack (feat. Kitsunebi)
Anti-Trench
- 4
Interlude:The skin and the nod
Anti-Trench
- 5
So that I don't have to pray anymore
Anti-Trench
- 6
the promise
Anti-Trench
- 7
Epilogue:Begin to turn
Anti-Trench
Artist Profile
Anti-Trench
Anti-Trench 詩人・向坂くじらとGt.クマガイユウヤによる朗読ユニット。2020年1stAlbum「ponto」「ŝipo」リリース。 向坂くじら 詩人。第一詩集『とても小さな理解のための』(しろねこ社)。朝日新聞、共同通信社配信の各地方紙、他雑誌などに寄稿。教育の分野でも活動し、各所で詩の出張授業を実施するほか、2022年埼⽟県桶川市にて「国語教室ことぱ舎」を自ら創設する。 クマガイユウヤ ギタリスト、コンポーザー。 セッションミュージシャンとして幅広くジャンルレスに活動するだけでなく、ソロプロジェクト・THE NAAVなど、各所で精力的に活動中。BMSG所属アーティスト・Novel Coreのバンドメンバー。
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Kitsunebi
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