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朝のスヌーズボタンを2回押し、裏返しのままのジャケットを羽織って駅へと向かう――そんな誰もが経験する寝不足の朝の「自動歩行(オートマチック・ウォーク)」を、至高の心地よさへと昇華させたBPM88(Fメジャー)のミニマリスト・ローファイ・インディーポップです。楽曲の核となるのは、人間の微細な生体リズムを模した「エラスティック・グルーヴ」。グリッドから8ms(ミリ秒)絶妙に遅らせて着地するキックが、無理に背中を押すのではない「たゆたうような前進力」を生み出し、4小節に一度(3小節目)だけ意図的にほんのわずか前につんのめるスネアが、人間のリアルな足取りを再現します。さらに、16小節周期で左右に3〜4%ゆらゆらと漂うステレオ音響設計が、まるで寝ぼけた頭のなかで風景が滲んでいくような、温かみのあるアナログな記憶のミックスを作り上げています。
ボーカルは、空間リバーブを一切排除した至近距離(クローズマイク)のドライな男性の話し声。ピッチ補正の無機質さを完全に拒絶し、かすかに掠れたテナーボイスが「コーヒーは温かく、電車は遅れているけれど、それでいい」という、淡々とした都市の日常を語りかけます。音圧を無理に上げるマスタリングではなく、2msのアタックタイムを持たせたグルーコンプレッションによる、トラック全体がひとつの生き物のように呼吸するプロダクション。最後はベースの心地よい低音の余韻と静かな呼気だけが残り、今日という日を肯定する絶対的な静寂へと着地する、ヘッドホンで繰り返し聴くためのスロウコアです。
Negi0723は、感情の揺らぎと都市の空気感を繊細にすくい取るミュージシャン。 エレクトロニックとポップ、オルタナティブの要素を横断しながら、 きらめきとノスタルジー、衝動と内省が共存するサウンドを描き出す。 印象的なメロディと映像的なリリックが特徴で、 一瞬の感情や夜の断片を切り取るような楽曲世界は、 リスナーそれぞれの記憶や物語と静かに共鳴していく。 ジャンルに縛られず、感覚を信じて音を紡ぐ。 Negi0723の音楽は、日常と非日常の境界線をやさしく溶かしていく。