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2006年にKrankyよりデビューして以来10周年を飾るChihei Hatakeyama。これまで,Opitope,Luis Nanook,All the frogs are our weekendなど様々なユニット、バンドも含めて多数の音源をリリースする傍らマスタリングエンジニアとしての活動、映画音楽の提供、2016年は坂本龍一主催のイベント『健康音楽』やTAICOCLUB 2016にも出演するなど様々に移り変わるシーンを横目に、一貫して追求してきたアンビエント・ドローンの価値観を求道的なまでに更新し続けている。
10年間の一つの集大成として記憶されるべきニューアルバム『Grace』は荘厳さと美しさ、恩寵と輝き、ノスタルジアを併せ持ち常に鼓膜を直撃する生命活動の波動のような作品。サン・ラ、ロックスティディ、マイルス・デイビス、アーセン・ヴェンゲル、ペップ・グアルディオラ、情報過多の現代にあって、彼を刺激し続ける固有名詞、そして本人曰く『Iphoneの万歩計が7歩の日もあったよ』という狂気を帯びるような制作の日々。引き延ばされたエレクトリックギターの音色が、波のように、または体の中で熱運動を繰り返す分子のように押し寄せる。そして彼の人生にとって大切な人物たちやツアー先で出会った人達に捧げられる,生きることの喜びをテーマにした作品でもある。穏やかな風に揺らぎ続ける爽やかな緑の葉のように、絶え間無く繰り返されるミニマルな音の連なりが最高潮にたっする至高の65分がここにある。