Lyric

胸抉るような感情に

足をとられ また立ち止まった

忘れられない情景

コラージュのなかに忘れ物をした

茜空 下手くそな

吹奏楽のチューニング

実らぬ恋 空っぽのグラウンドに

クラシックが響く

バイト先のキャラバンから

流れたスローなナンバー

雨がりペトリコール

乱反射の街に目が眩んだ

退屈な日曜日

ザ・ノンフィクションは流れた

鉄塔にカイト まるで

リリイの飛べない翼だ

大嫌いだ

夕方4時のチャイムが寂しくて

大嫌いだ

晩時のアパートの灯りが綺麗で

訳もなく急に盛り上がる瞬間と

その後にやってくるシラけた冷静も

喜怒哀楽そのどれとも違う

こんな気持ち大嫌いだ

馬鹿騒ぎの打ち上げ

喧噪裂く帰り道の空虚

思えばこんな気持ちになるのは

いつも一人の時だ

潮風に錆びたトタン

埃かぶった写真の二人

ひぐらしの鳴き声が

夏の孤独を象った

大嫌いだ

あの子が放った最後のさよならも

大嫌いだ

平気なフリして僕が言う

ありがとうも

夜風を泳いだ感傷の彼方に

あいつの顔が浮かんでは消えた

春夏秋冬 季節の狭間

落ちてく夕陽を見ていた

空き家になった祖父の家にひとり

木漏れ日が持ち上げる

カーテンの揺れに

最後のひとりになったかくれんぼ

人気のいない公園のブランコ

意味もないのに形もないのに

胸が痛いよ これはなんだよ

名前もない気持ちはいつも

心の奥底を引っ掻いた

大嫌いだ

手の届かない想い出は優しくて

大嫌いだ

その一つ一つが欠けがえないもので

振り返る景色ほど綺麗に見えて

過ぎていく時はあまりにも残酷で

大人になって忘れたはずなのに

なんで心震えるんだ

大嫌いだ