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東京を拠点とするバンド、くらげ計画の『うつくしいひと』は、2019年のEP作品『はじめてみるゆめ』以来、実に4年振りとなる新曲である。4年という月日の中で3ピースだったバンドは4人組として新たに生まれ変わり、有体に言ってしまえばシーンへの復帰第1弾という位置付けの楽曲ということだ。

2020年代以降、未曽有のパンデミックを経験した世界は混乱を極めながらも、少しずつ平静を取り戻しつつあるように見える。この数年間の出来事は、何かしらの表現を志す者であれば、創作活動において大なり小なり影響を受けざるをえないことは言うまでもないのだが、くらげ計画はどうなのか?

若さゆえの危なっかしさ、制御できない感情の揺らぎがそのまま鳴らされていたような轟音は驚くほど力強く、確信に満ちた響きへと姿を変えた。2本のギターが見せる表情の違いが、くらげ計画の持つ光と闇のコントラストをより鮮明にしている。緩急を使い分けた彼女たちらしいバンド・アンサンブルを支える、メロディアスなベース・ラインと楽曲に寄り添うようなドラムスのコンビネーションも更に強固なものとなった。中盤でリズム・チェンジする展開は、”Waltz-Alternative rock”を名乗る彼女たちの面目躍如と言えそうだ。以前のくらげ計画を知っている人であればこそ、バンドとしてネクスト・レベルへと達した姿に改めて魅せられることだろう。

時代の喧騒とは無縁の強さを持ったメロディと歌声が紡ぐ『うつくしいひと』の世界は、くらげ計画特有の夢幻的な美でも透徹したリアリズムでもなく、幼い頃に耳にした寓話のようなものであり、深い海の底にかすかに届く光である。勿論、シンプルな「幸せ」を真っ正直に歌うようなバンドではないわけで、2023年という時代に提示されたジェリーフィッシュの見る夢の続きが「無垢な世界」であるのかどうか、私自身も見守っていきたい。

井上 光一 (音楽ライター)

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うつくしいひと

Spotify • キラキラポップ:ジャパン • 2023年8月8日

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