「やあ ひとつ目の少年
ここは少しばかり
生きづらいだろう?
怖がることはないさ
僕と 一緒に行こう
哀しい雨は 続くが
君を濡らすために
降るわけじゃない
なあ ここからは離れよう
辛く 時間の無駄だ」
「雨に濡れ 体を
冷やしては 風邪を引く
その位 当たり前のことだ
さあ 行こう」
雨 降り頻る世界で
あなたの名前を 叫んでいる
「きっと分かり合える」だなんて
愚かな幻想を 捨てる
ただ隣に座って
話をしてくれるだけでいいのに
一 二 三 四
投げられた石を数えた
生を受け 愛を貪り
健やかに 育っていく
不自由はなく その自覚もなく
少しずつ 歪んでいく
醜さに 目を背ける
「ああ、美しい人間」
彼らのいう 優しさは
好きな者にしか 使えないらしい
なぜ 人は敵味方を
姿形だけで 選べてしまう?
なぜ 話も聞かないで
容易く愛し 憎めるんだい?
また 悪い癖だ
理屈が通るなら 彼は死なない
もういい。
僕らだけの国を作ろう
「なあ ひとつ目の少年
君も分かる日が 来るだろう
我らの持つ ”優しさ” は
憎む者をも 愛すのだ」
雨 降り注ぐ世界でただ
背中に矢を受けて 笑っている
あなたが最期にくれた言葉
「本当は誰しもが 異形」
なら この眼が曇るまで
僕らだけの国で その日を待とう
壱 拾 百 千
奪われた 命を数えては
悲しみに暮れようと 世界は廻る
憎しみに飲まれても 誰も還らない
醜さを愛せた時 世界は変わる
目を背けぬ様に
異形の国
- 作詞
Kish.
- 作曲
Kish.
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異形の国 (feat. 歌愛ユキ)
Kish.
「やあ、一つ目の少年」
不意に、大きな囁き声が耳に入ってきた。
目を開けると、赤い法被を纏った仮面の大男。
殺意はない。あればとうに彼は目覚めてその場を離れている。
少年は身構えこそしなかったものの、その大きな目を見開いて眼前の大男を注視した。
「ここは少しばかり…生きづらいだろう?」
少年は瞬き一つせずに見つめる。
「怖がることはないさ」
「僕と一緒に行こう」
雨は止んでいた。