高円寺、一年二か月。まだ知らない。何も分からない。のジャケット写真

高円寺、一年二か月。まだ知らない。何も分からない。

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「朝まで高円寺にいる」と言う体験を一度してみたかった。
だからその日は吉原悲劇に引っ付いて始発まで過ごした。

酔い狂った人間ばかりのデアデビ。
交わされる真面目な映画と音楽と人間の話。

いつもは行き交う人でごった返してる商店街も、夜の中で静まり返っている。

吉原悲劇は言う。「南口に兎に角デカいドブネズミが出るんだ」と。
宛ら名所見物にでも行くような勢いで南口へゆく。

広場には想像以上に太ったドブネズミが、しきりに汚い草陰から飛び出しては戻り、戻っては飛び出していた。
私は"表現的衝撃"を受けた。そして言った。

「悲劇さん、この広場と鼠は無善寺と一緒なんですよ!我々は汚いこの広場だけが居場所の、ドブネズミなんですよ!」

二匹のドブネズミは、缶チューハイを片手に"友達"を眺め続けていた。

きっと、どうしようも無い夜にしかない宝物が在るんだと私は思った。

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哥処 墨林庵