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「METROPOLIS」
Iwamura Ryuta
世界各地の都市のノイズと、静謐なピアノ演奏を
コラージュした“CITY”(2019作品) の続編と言える本作。
環境音と音楽の融合という前作の作意と技法を引き継ぎつつ、
このアルバムでは作品が繰り広げられる舞台の焦点を、
世界から東京へと絞ります。
ある日、メトロポリス、東京に響いた音。
東京駅、次々に出発する列車が刻むジョイント音のビート。
羽田空港、束の間の静寂を破るジェット機の爆音。
東京湾の最終処分場に轟く廃棄物の粉砕音。
国立近代美術館で静かに響く来場者の靴音。
環状8号線を打つ巨大な雨音…。
夏の朝、世田谷の子供たちの遊び声が、
蝉しぐれに溶けています。
山下公園の氷川丸の汽笛が正午を告げ、
午後の丸の内では信号機の誘導音が重なり合い、
不思議な音楽を奏でています。
そして夕暮れ、増上寺の鐘の音が芝公園の大気を漂い、
夜を迎えた郊外では虫たちが羽を震わせ始めました。
岩村が録音したこれらの東京のノイズは、
このアルバムの中で、楽音に等しいものとして
音楽の重要な構成要素となるだけでなく、
ある時はコラージュの素材のように自由に配置され、
またある時は音楽の背景に、
静かに鳴り響くドローンのようにも扱われます。
曲の標題は「駅」「美術館」「公園」「空港」「埋立処分場」
「寺」「交差点」「港」「ホテル」など、
無機的、抽象的で、東京という土地との関連性が
意図的に剥ぎ取られています。
これらの音が鳴っている場所は、
本当に“東京”なのか、或いは私たちの内にある
どこでもない都市“METROPOLIS”なのか、
そんな詩的な問いが投げかけられているようです。
私達の意識は音楽に近づき、離れ、
環境音と楽音の境を彷徨いながら、
究極に抽象化された大都会“METROPOLIS”を
周遊する旅に出ます。
新潟市出身、 東京在住。 作曲家、 ピアニスト。 音楽の " 断片 " で構成された 24 調のピアノ小品集 「Sunday Impression」 「MondayImpression」、 " 聴く " ために " 読む " という逆説的タイトルの ピアノソロアルバム 「Reading to Hear」、 フィルム ・ ミュージック的なアプローチの 「Tokyo Reminder」、 都市のノイズと音楽をコラージュした 「CITY」、 雨音と音楽との境界を探った 「Raining to Hear」 、 トイ楽器を軸に、日々の暮らしの行為までも音楽に取り込んだ「Symphony」など 常に音楽とその聴取のあり方を問いかける作品を発表してきた。
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