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「真紅のハナミズキ」は、恋の一瞬を切り取ったような歌詞と、ドラマチックに展開するサウンドが溶け合うポップス作品です。
楽曲全体を通して描かれているのは、“別れを予感しながらも、もう少しだけ一緒にいたい”という切ない気持ち。終電を気にする恋人を前に、笑顔で引き留めたい心、壊れるのが怖いからこそ素直になれない心。歌詞はそんな揺れる感情を繊細に描き出します。
イントロからヴァース(Verse)にかけては抑えた雰囲気で始まり、プレコーラス(Pre-chorus)でじわじわと期待感が高まり、サビ(Chorus)で一気に感情が解き放たれる構成になっています。これは恋愛の駆け引きの緊張感そのものであり、音楽的にも物語的にも「溜め」と「爆発」のコントラストが楽しめます。
サビでは「終電なんて気にしないで」「門限なんか気にしないで」と、時間の制約を超えて相手といたいという強い願望が繰り返されます。ここには“恋の一夜をどう過ごすか”という普遍的なテーマが込められており、聴く人それぞれの記憶や経験と重ね合わせることができるでしょう。
特に印象的なのは、タイトルに含まれる「ハナミズキ」というモチーフです。花言葉は「私の思いを受けとめてください」。このフレーズは実際に1番のサビの歌詞にも盛り込まれ、主人公の切実な気持ちを象徴的に表現しています。赤い花の鮮やかさは恋の情熱や一瞬の輝きを映し出し、同時に儚さや切なさも感じさせます。歌詞と花言葉、そしてタイトルが三位一体となって、より強いイメージを浮かび上がらせます。
また歌詞の随所に登場するイメージも鮮烈です。
「時計ばかり見る」姿に込められた寂しさ
「白黒つけるトランプゲーム」で描かれる恋と友情の選択
「ペーパーバックのミステリー」として例えられる恋の過程
これらは日常的でありながら象徴的で、歌詞全体にドラマ性を与えています。
楽曲のサウンド面では、ダンサブルなリズムと華やかなシンセ、鋭いブラスの響きがサビで爆発的に広がり、歌詞の感情をさらに強調します。抑制されたヴァースと、派手でキャッチーなサビのコントラストによって、リスナーは自然に物語の起伏を体感できます。
この楽曲は、恋の甘さと切なさを両方抱きしめたい人に響く一曲です。聴きながら、あなた自身の“あの夜”を思い出してみてください。
札幌市出身の作詞家。日常の小さな情景や心の揺れを丁寧に切り取り、 切なさとあたたかさが同居するJ-POPの歌詞世界を描く。