Lyric

軽やかな足部 跳躍の距離 踊り狂うこども

公園 トイレの屋根から飛ぶ 時空 パラソル 食品のカタログ

石柱に寄りかかり子を孕む母は詩を読み聞かせる

真上に飛ぶ水飲み場の水は自らを透明で貫く

忠魂碑の文字の溝に埋めた砂が流れ落ちている

砂場の砂が減る 滑り台 拾う紙幣 短い手

蛙の口に入れた爆竹 玩具にするひとのこころや動植物

両開きの皮膚 自分で痛みを知るための傷

仲違いしたあなたがいた砂漠の一粒がわたくし

渇く舌を伸ばしたのだ 壊した他の子のロボ ドロボウの膨らんだ袋

幻想を象る タナトスは深く穴を掘る

不憫な星の一点は腫瘍 指でさす好発部位

低いトタン屋根が引っ掻いた二の腕の線が分けるこれまでとこのさき

もどかしいあの夢の結末を目にする

ブレーキ踏む ネイビーの軽自動車 自転車がわたくし

空振りするバット 投げる安全帽 堕ちるアスファルト

終息を予測すらせずに生まれつきの目つきをする

再現するあのとき もどかしいこの夢の結末を目にする

出入りする脳室 墓標の隙間を歩く 存在の観測

靴あとをつけた雪 二階の窓に置く蔵骨器

囲まれたラット 籠 デコレートされた箱は角 割れた窓

割れたようにみえる窓 惑う 絵の窓にぶつけている下顎

白髪のふえた街 川上からながれてくる廃棄物

難病の友人のホログラム 細くなる腕がふるえていた

増えるシミ カーペット 器 ひびや欠片 賑やかな部屋

きみが投げる球を取りいくとひとり取り残されていた

似せて書いたような異世界で着せ替えている人形 人見知りの異形

これ以上の昨日とむかし 過去のアルバム 異常気象で街がなくなる

甘くなくなる駄菓子 感覚はなくわたし騙し

災い 病 かまいたち 渇いた舌にかたちなき液を垂らす

混ざらず 透明を貫くわたしだけのマザーアース

窓ガラス模様の壁に外を描く その方角を滞らずに書く

天照 畑荒らす烏 放つ罠から また腹減らす

抗えなくなる頃とこども こころ 驚きをもの乞うもののけの手

もとへ戻せ 戻せない余所者は手足 髪 喉仏

戻ろうとする部屋に雨着 新しくあなたらしく配色された柄

曼陀羅 肋に巻く晒し 傍におく禍々しい歯並びと目つきしたわらべ

空風にまかせ屍 鳥の腹 空は血だらけ

点滴をいじる爪の色 ステロイド

痩せるチューブから搾るそれ 固形のモネ 骨がとけるまえに戻れおれの光景

軽やかな足部 跳躍の距離 踊り狂うこども

公園 トイレの屋根から飛ぶ 時空 パラソル 食品のカタログ