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新たな風の肖像
雲の上で、まぶしい風が吹いていた。
その風は、遥かな遠い国々から吹いてきた。みんな、その風に憧れて懸命に楽器に向った。
ほんの少し年代をさかのぼった頃、日本で吹奏楽に打ち込んだ人なら、この「雲の上を吹く風」の感覚が解かる。高水準の「本物」の音は、常に外国から吹いてくる風だった。
いつになれば、その憧れの風が日本の風として自然に吹く季節がやってくるのか、見当もつかなかった。風は、いつもまぶしかった。
ところが、どうだろう。この『なにわ 《オーケストラル》ウィンズ」の5回の軌跡を描くコンサートは! 第1弾から続く見事なCDは! 雲の上だった遥かな国の風、憧れの風が、すぐ身近なところで吹いている。いま吹奏楽を愛する人々は幸せだ。もう手の届かない雲の上の風を、遠い国を、羨ましがらなくていいのだから。このまぶしい風は日本の風だ。
しかも、吹奏楽とオーケストラのあいだの面倒な壁を、この美しい風は悠々と超えている。 名門交響楽団の奏者など、日本の第1級の名手たちが、楽しみつつも真摯な姿勢を聴かせている。さらに凄いのは、実験的で挑戦的姿勢を鮮明に打ち出していること。「吹奏楽にはこんな可能性がある、視点を変えればこうなる」、そんな提言を彼らは、驚くべき実験や新作委嘱、稀少曲の発掘で発信してきた。
そして最新の演奏会で彼らは、本拠地ザ・シンフォニーホールから東京にも出掛ける。客席には、クラシック界で注目の若手指揮者など、玄人も多く駆けつけ話題騒然ぶりを証明した。その鮮烈な記録が、このCDなのだ。
これは、新たな風 (Winds) の肖像だ。
響 敏也(作家・音楽評論家)
交響楽団奏者達によるスペシャル吹奏楽
ブレーンミュージック