Lyric

いつも施錠された玄関 窓から覗く 踊る 孤独なる

王国の守秘 めくれてるカーテンの右隅 月と空気

無人にみえてある躯体 兄弟は対となり歩行する

右の兄が引きずった弟は左にあるテーブルの角

乾燥した湿布 傷を舐めて箱を返す

まだ歩ける 足の指でつかむ欲 床の感触

革張りのマネキンを横切って落ちた鬘を拾った

飾る物を探す人 剥がす衣装の色と同じ首の筋

形状 束にする 鎌で刈るまえの芍薬

白濁の林木を抜けるために弟は存在を証明する

幻想は今宵も饒舌である 部屋の天井が

触れている家具の上部 埃 昭和初期の箱の字

アポロジー 天体 テント 星の数 合わすフォーカス

窓枠の内外は足りないものをとりに出入りする 鍵をする

タイトルと違うテープ 記憶とぶサイボーグ

脳を解剖する ６歳の記憶 砂漠 歩行 浮かぶ雲

使う黒の塗料 これは僕 わたくしの追体験

繰り返せ HEAD∞CHEはループする 復讐のポエット

硝子の窓 小瓶 レンズ 有象無象 明度

兄のポケットからこぼれたガム チョコレート ラムネ グミと飴

海となれ我が肉体 波でばらすコネクトーム

小節を跳ぶセロトニン 孤児 凶器 取り戻すとき

埠頭を飛ぶ鳥の糞が落ちてパン屑は空中

おろしたての靴の底を汚す

利き手の妹は態度がでかくていつも五月蝿い

夜中にきて兄のポケットの中身をくすねる

錠を破る 生活があった空き家 写真たての家族

シーツをかぶるこども 霊体の挙動 透けてみえる外

胸像 馴染む家具を盾にするモノグラム

泥臭く求めつづけた無限の窓外 壁紙の四方

立体 その中で与えられた役目を忘れて

息もできないこどもたちは両手を丸めて施しを乞う

老木の陰で青い生の袖口をつかんだ

邪気のない握力は尽きる ひび割れたスープ皿の破片

断片 痛みよりも握りしめた鋭利性の奇声

神経がすれている音 プラスチック シンク ナイフ

切り離す胴の上部 わたくしと兄 姉と妹

右脳から放たれた片割れは与えられた靴を脱ぎ捨てる

新雪につける足跡 歩かされていたころの癖や名残り

あのとき 振り返るいま 黴びた居間の襖 カルマ

衝立 赤い道 前衛の吐血 喀血

ひとが呼ぶ満月は歪 われわれの韻律

モルタルの舌は林立するひとの影をいじくる

緻密 綿密 演技する頭部 飛ぶ 上空を覗く

おんぶされた妹や兄と姉 わたくしの着る服

つながりのない血 降る大地 覆したオセロ 黒と白

糞と血の色に染められていろ

四肢は去る カルサイト 台座 まわす回廊