

指先で触れても
すぐにほどけてしまいそうで
君のシャツを抱きしめた
君の残り香だけは 現実だったけど
心の奥深くでは、リアルが薄くて疑っているんだ
曇った窓辺に 灰色の街が滲んで
歩道に 置き去りの傘が揺れている
まるで わたしの心みたいに
君の手の温もりが
心臓の拍動を追い越して
わたしを ここに留めていたの
その確かさだけが
存在の証のようで
すがりついていたこと、誰にも話せていないまま…
ふたりで 見つめ合ったあの夜
君の瞳に映るわたし自身を見て
初めて “ここにいる” と気づいたの
わたしは 君の瞳の中でだけ
呼吸をしていたこと覚えてる
そんな気持ち、君に伝わっててほしい
あなたの名前を 呼んでもいいの?
まだ呼べない
でも 呼びたい、
声に出したい
それでも 迷ってる
迷ってしまうんだよ
──それでも呼びたくなる
呼んでしまいたくなる
壊れてしまうってわかってるのに
夜更けの街に 灯りがともりはじめ
現実と夢が 溶け合っていく
君の瞳に残ったわたしは
影のようで
それでも 確かに息をしていた
君が わたしの名前を呼んだとき
心に 灯りがともった
鼓動が速くなる
速くなっていく
自分じゃ どうにもできなくて
鼓動の音に反響したわたしの気持ちまで溢れてしまうよ
だから
呼吸まで 乱れていく
呼吸がうまくできないと
この世界の中ごと、溺れてしまっているみたいなの
止めたくても 止まらない……
止められないんだ
鼓動も呼吸も、わたしには操れない大きな化け物みたいで
怖いんだ
怖いんだよ
ねぇ、助けてよ
君が わたしの名前を呼ぶたびに
わたしは 存在しているの?
君がその名前で呼ぶあいだだけは
たしかに “わたし” でいられた
でも 時間は流れて
名前も声も 遠ざかっていった
灯りは消えて 夜は朝に溶けて
あらゆる色が 静かにすれ違っていく
残されていたのは
鼓動と──
頬にのこった 涙のあとだけ
それが
夢だったのか
まぼろしだったのか
ねえ、君は 覚えてる?
あの夜──
君の瞳には、
わたしは 本当に映ってた?
君の瞳に映ってたの?
どうか教えてよ
教えてほしいけど
ほんとのことを聞くのも怖いの
- 作詞者
しゅか / Room no.38
- 作曲者
しゅか / Room no.38
- プロデューサー
しゅか / Room no.38
- ギター
しゅか / Room no.38
- ベースギター
しゅか / Room no.38
- ドラム
しゅか / Room no.38
- キーボード
しゅか / Room no.38
- シンセサイザー
しゅか / Room no.38
- ピアノ
しゅか / Room no.38
- その他の楽器
しゅか / Room no.38

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わたしは存在してもいいですか? (オリジナル)
しゅか / Room no.38
ラカンの思想をモチーフにした、日本のエモーショナルなポップロックソング。
女性ボーカルによる静かな叫びが、存在と愛の構造を問いかける。
テンポ110BPM、力強い四つ打ちのキックとメランコリックな下降ベースが、
ピアノを中心としたマイナー進行の中で揺れながら進行する。
バースではリズミカルなコード、コーラスでは16分のドライブが感情を押し出し、
ハモリやアドリブを抑えたクリアでエモーショナルな歌声が、
「愛とは、他者の視線の中でしか自分を見つけられない」――その痛みを描く。
映画的で現代的なアレンジと、哲学的な詩の融合による、“存在の物語”。



