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箱根独特の呼吸を感じる楽しいワインディングロードを走りながら、友人の車と2台で温泉に向かう。
お転婆娘の友人は、駐車場をスピンターンで確保。
頼むから公共の場ではやめてくれ。
温泉に着いたのは7時台後半。
入り口に向かう途中、またハプニング発生。
今度は水たまりに向かって大転倒。車から降りても、私はとことんドジだ。
フロントで朝風呂入館を済ませる。
屋上の「大露天風呂」へ向かう階段は、やけにいい音がする。
更衣ロッカーで、バスタオルに身を包み、いざ露天風呂へ!
縁まで二歩。指先で温度を確かめ、肩まで沈む。
硫黄の香りがやわらかく追ってきて、白いヴェールが視界をゆっくり占拠する。
芯の寒さが、ほどけていく。
これこそ、私が東京から追い求めてきた「今日の白い夢」
「回復、進捗、七割。」
「残り三割は?」
「あなたのひと言で満たして。」
彼女はくすっと笑い、白い水面を指先で弾く。点が跳ねて消える。
風向きが変わると、「白」が割れて滝の音が遠くに届く。
頬がほんのり色づく。心拍は人の動きに戻った。
白の正体は、今はちゃんと「お風呂」
霧でも白煙でもない。
私はお湯の中で、まじめに決意する。今日はもう、「透明」に負けない。
上がり湯を浴び、髪を乾かす。
サンダルを履くと素足がコツ。同時に、彼女のコツ。
同時は気持ちいい。今朝のキーワードだ。
自販機の前で同じボタンを同時に押し、同じ飲み物が二本落ちる。
私は笑って提案する。「じゃんけんで決める。あいこでお風呂は、もう無し。」
「もう入ったからね。」
二人で笑い、外に出る。白は薄く、空は濃い。
稜線の向こうに細い線。芦ノ湖スカイラインが薄く手招きしている。
彼女が顎で示す。「次は青を追おうか。」
「白を連れて。」私はまじめに、でも少しだけいたずら心を混ぜて答える。
アクセルは、さっきよりもあたたかい音で返事した。
——朝のお風呂で取り戻す温度。白は味方。
Project ZQQは、ハイスピードで駆けるユーロビート/トランスに“道と景色の物語”を縫い込むプロジェクト。ビートはタイヤ、メロディは風。わたしは、地図の余白をリズムで塗り替えていきます。 東京の高架から海沿いのバイパス、峠のワインディング、各地の景色や温泉、おいしい食べ物まで。 ひとつひとつの曲が一章、次の目的地へ続く短編ストーリーにもつなげている曲もあります。エンジンスタートの瞬間に胸のメトロノームが半拍だけ先へ跳ねる、あの感覚を音で。 ドライブ、作業、トレーニング、深夜のデスク、ダンスフロア。どの場所でも"今"にテンションを合わせて持ち上げるサウンドを届けています。 ※すべてのストーリーはフィクションで、実在の人物や団体などとは関係ありません。