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思い出には、匂いがある。
季節の風だったり、
古い喫茶店のコーヒーだったり、
擦り切れたレコードのノイズだったり。
「マディを聴きながら」は、
もう会わなくなった誰かを、
ブルースの向こう側に見つけてしまう歌。
あの頃の私たちは、
きっと何もわかっていなかった。
好きな音楽の話をして、
どうでもいいことで笑って、
未来なんて曖昧なまま、
ただ一緒に歩いていた。
別れは悲しいものだと思っていた。
でも時間が経つと、
涙は少しずつ輪郭を失い、
思い出は痛みよりも温度を残していく。
戻りたいわけじゃない。
忘れたいわけでもない。
ただ、マディの声が流れるたびに、
「ああ、こんな人がいたな」と思い出す。
人生は続いていく。
レコードは回り続ける。
そして今日もまた、
あの泥臭いブルースが、
少しだけ優しく胸を鳴らす。