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ずっと居場所が無かった。僕には居場所が無かった。
五年前の夏、僕は音楽をやるために上京した。
一人で歌いながら仲間を探し、バンドをはじめた。
でも何処に行っても、誰と会っても窮屈で、無理に合わせる必要があった。
限界が来て、逃げるようにバンドを辞めた。三年前の夏だ。
人と一緒にいるのが嫌になった。
僕は家に引き籠りがちになって、暗い歌ばかり作り始めた。
たまに出たライブでそんな歌をやったら、気味悪がられた。
僕の歌を分かってくれる人はいないんだなと感じた。
さらに僕は引き籠るようになった。
2022年も終わるころ、三上寛のブログで変な名前の店を見つけた。
無力無善寺という店だ。
興味本位で一度だけ出てみることにした。
年が明け二月、僕は高円寺駅に降りた。
薄暗いガード下を歩いて、ぼろぼろの茶色い看板を見つけた。
狭く汚い階段を登り、真っ黒いドアを開けたら、僕がずっと探していた居場所がそこにあった。
僕の不幸を聞いてくれた。
僕の悲しみを聞いてくれた。
僕の絶望を聞いてくれた。
だから僕は今日も、これからも、ずっとずっと無力無善寺で歌いたいのです。
地獄の詩世界と秋田弁ブルースを唄う、ただの秋田県人。じゅんさい王国(旧・山本町)出身。2023年頭より弾き語りを本格始動し、代表曲である『犬の川』はライブ演奏を通し多数の人間から「これは犬の楢山節考だ」などと激賞を得た。また秋田弁ブルースは「何を言ってるか全く分からないけど面白い」等の声を集め、ライブの重要要素の一つとなっている。
哥処 墨林庵