油屋阿波福岡貢音頭由縁・青江下坂之恋寝刃のジャケット写真

油屋阿波福岡貢音頭由縁・青江下坂之恋寝刃

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トラックリスト

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inspired by 近松徳三『伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)』(1796)、大阪・角座


油屋騒動(あぶらやそうどう)とは、江戸時代に伊勢国古市の遊廓で起きた殺傷事件のこと。俗に「古市十人斬り」とも呼ばれる。
寛政8年5月4日(1796年6月9日)の深夜、伊勢古市の遊廓油屋において9人の者が刀で斬られた。


1. 時代・背景
成立・初演: 寛政8年(1796年)8月(大阪・角座)。

作者: 近松徳叟(ちかまつとくそう)。


素材: 寛政8年5月4日の夜、伊勢古市の「油屋」で、医師の孫福斎(まごふくいつき)が遊女おこんらを殺傷した実際の事件(「油屋騒動」)に基づいています 。


人形浄瑠璃版: 天保9年(1838年)に稲荷の文楽座で上演されたのが始まりです 。

舞台: 伊勢・古市の遊郭「油屋」。

2. あらすじ(「油屋の段」)
【発端:刀の詮議】
阿波の藩士・福岡貢(ふくおかみつぎ)は、紛失した主家の重宝「青江下坂(あおえしもさか)」の刀と、その鑑定書である「折紙」を探している。貢は、敵役の徳島岩次(とくしまいわじ)がそれらを持っていると突き止め、伊勢古市の遊郭「油屋」へ乗り込む。油屋には貢の恋人である遊女・お紺(おこん)がいる 。

【仲居万野のいじめ】
油屋では、貢の元家来で今は料理人として働く喜助(きすけ)が内通し、貢を助けようとする。しかし、油屋の仲居(実質的な女将役)・万野(まんの)は、貢を嫌い、執拗に意地悪をする。万野は「お鹿(おしか)」という別の遊女に「貢はお前に気がある」と嘘を吹き込んでおり、金のない貢を皆の前で辱める 。

【愛想づかし】
恋人のお紺が出てくるが、彼女は岩次から刀を取り戻すため、心を鬼にして貢に偽りの別れ話(愛想づかし)をする。「岩次様に乗り替える」「お前のような貧乏人は嫌いだ」と冷たく言い放ち、貢の盃を投げつける 。
事情を知らない貢は激怒し、絶望する。

【刀のすり替えと殺戮】
岩次は貢を嘲笑い、自分の刀(実は貢が探していた名刀)を見せびらかして部屋へ入る。喜助は機転を利かせ、岩次の刀と貢のナマクラ刀をすり替えておく 。
万野やお鹿に罵倒され、追い詰められた貢は、堪忍袋の緒が切れ、万野を斬り殺す。刀が名刀・青江下坂に入れ替わっていることに気づいた貢は、妖刀の魔力にも取り憑かれたかのように、次々と人を斬り(十人斬り)、ついに岩次を倒して本懐を遂げる 。
【結末】
貢はお紺と共に、追手から逃れるためにその場を立ち去る 。

3. 登場人物
福岡貢(ふくおか みつぎ): 主人公。阿波の藩士。紛失した名刀「青江下坂」を探している。真面目だが、激しい怒りを内に秘める。

お紺(おこん): 油屋の遊女。貢の恋人。機転を利かせ、刀を取り戻すために貢を裏切るふりをする。

万野(まんの): 油屋の仲居(遣手)。強欲で意地悪な性格。貢を徹底的にいじめる。本作の悪役の一人。

喜助(きすけ): 油屋の料理人。実は貢の家の元家来。貢を陰ながら支える忠義者。

徳島岩次(とくしま いわじ): 貢の敵役。名刀を盗み出し、お紺を身請けしようとしている。

北六(きたろく): 岩次の手下。

お鹿(おしか): 油屋の遊女。万野に騙され、貢が自分に惚れていると思い込んでいる道化的な役回り。


実際の台本のセリフから抜粋

五度十度の唄(うた)事かいな。エイ何をそれに今更知らぬとは。
ソリヤ卑怯(ひきょう)ちやわいな。
こんな文(ふみ)やつた(やった)覺えない。お鹿。
孟宗(もうそう)に相生(あいおい)の松(まつ)こそ目出(めで)たかりけれ。

「油屋(あぶらや)の二階(にかい)座敷(ざしき)。
阿波(あわ)の客(きゃく)が居(い)続(つづ)け大騒(おおさわ)ぎ。
テモマ面白(おもしろ)さうに唄(うた)ひをるな。」
テモマ面白(おもしろ)さうに唄(うた)ひをるな。

青井(あおい)下坂(しもさか)。
いかにも刀(かたな)は手(て)に入(い)れども。
証文、折紙(おりがみ)を蹴(け)られ。

南無三(なむさん)手(て)が廻(まわ)つたか。

「地(じ)サア壺(つぼ)ぢや。岩(いわ)大壺(おおつぼ)とは何(なん)壺(つぼ)ちゃえ。
水壺(みずつぼ)か魔壺(まつぼ)かえ。エ、子壺(こつぼ)ちやく。」

「ぞや阿波の騒動(そうどう)より。
あなた様(さま)にはる難儀(なんぎ)。」

「お紺さんとの浮名(うきな)は。
古市中(ふるいちぢゅう)一杯(いっぱい)。」

「最前(さいぜん)から聞いて居ればあんまりなおれぢやないわい。」

「ヨウコリヤおれが名を騙(かた)つて。お鹿へ無心の狀(じょう)。」

こんな文(ふみ)やつた(やった)覺えない。お鹿。

轉(ころ)びつ這(は)ひ廻る。
逃行く後を遁(のが)さじと。……鉢前(はちまえ)のあたりを。
ガッその儘。お紺が盃ひつたくり。

フッ落花(らっか)微塵(みじん)と投(な)げ付(つ)けたり。」

古市中(ふるいちぢゅう)の油をねぶり廻る油虫。
オ、お紺も、その池虫(いけむし)の事はとんと思ひ切り
油屋(あぶらや)の二階(にかい)座敷(ざしき)。
孟宗(もうそう)に相生(あいおい)の松(まつ)こそ目出(めで)たかりけれ。
五度十度の唄(うた)事かいな。エイ何をそれに今更知らぬとは。
テモマ面白(おもしろ)さうに唄(うた)ひをるな。

「涙(なみだ)まぎらす煙草(たばこ)さへ。フシカ、炎(ほのお)にむせる思(おも)ひなり。」
「遠寺(えんじ)の鐘(かね)も身(み)に……泌(し)みわたくと。」

青井(あおい)下坂(しもさか)。
いかにも刀(かたな)は手(て)に入(い)れども。
証文、折紙(おりがみ)を蹴(け)られ。
南無三(なむさん)手(て)が廻(まわ)つたか。

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