

シャワー浴びても 落ちない匂い
肌に残った 知らない人
シーツの跡が 太ももに
消えないまま また化粧
ロッカーの中 しわくちゃの札
数える指が 少し震える
時給で割った 私の時間
安いか高いか もう考えない
名前を呼ばれ 作る声
「はじめまして」を 何回言う
優しくしても 雑でも
終われば同じ 無言のドア
風俗嬢になった私
触られても 感じない
感じないことが 仕事になって
心だけが すり減る
風俗嬢になった私
「楽な仕事」と 言われるたび
この体より 先に
何かが 壊れてく
指輪の跡が 白く残る
家庭の匂い 連れてくる人
「君は悪くない」って
言うなら 来ないで
鏡に映る 派手な顔
剥がしたら 誰だっけ
帰り道で 吐きそうになる
コンビニの灯りが やけに明るい
慣れたのか 麻痺したのか
違いももう どうでもいい
ただ 時間が過ぎれば
金になるだけ
風俗嬢になった私
安く見られて 高く売る
尊厳なんて 言葉より
今月の 家賃
風俗嬢になった私
笑顔が 上手くなるほど
本当の声が
出なくなる
「やめたら?」って
簡単に言うな
逃げ道は
もう 通れない
風俗嬢になった私
誇れなくても 嘘じゃない
汚れたんじゃない
汚される前に
自分で 選んだ
風俗嬢になった私
朝が来るのが 怖い夜
それでも息をして
生き残ってる
メイク落としで 顔を消す
最後に残る 素の目
誰にも買われない
この時間だけ
私のもの
- 作詞者
510
- 作曲者
510
- プロデューサー
誰にも言えない
- グラフィックデザイン
誰にも言えない
- ボーカル
誰にも言えない

誰にも言えない の“風俗嬢になった私”を
音楽配信サービスで聴く
ストリーミング / ダウンロード
- ⚫︎
風俗嬢になった私
誰にも言えない
「風俗嬢になった私」は、
“仕事として身体を使うこと”よりも、“感情を切り離し続けること”の消耗を真正面から描いた楽曲です。
シャワーでも落ちない匂い、シーツの跡、震える指で数える札――
冒頭から描かれるのは、華やかさとは真逆の日常としての現場。
ここで描かれる風俗は、刺激や快楽の場ではなく、
感覚を殺し、時間を金に換える場所として存在しています。
サビで繰り返される
「感じないことが 仕事になって」
という一節は、この曲の核心です。
“感じない自分”を責めるのではなく、
感じない状態に追い込まれる構造そのものを淡々と突きつけます。
後半では「尊厳」と「家賃」、「やめたら?」という無責任な言葉が対比され、
社会の側が持つ簡単な正論の残酷さが浮かび上がります。
逃げ道は理屈では存在しても、現実ではもう通れない。
その閉塞感が、Cメロで静かに爆発します。
ラスサビでは一転して、
「汚される前に 自分で選んだ」
という強烈な自己肯定が置かれます。
これは美化ではなく、生き残るための選択を否定させないための言葉です。
誇れなくても、嘘ではない。
それでも朝が怖い――その矛盾を抱えたまま、息をしている。
アウトロの
「誰にも買われない この時間だけ 私のもの」
という一行は、この曲に残された唯一の救いであり、
人間としての最後の輪郭です。
この楽曲は同情を求めません。
説教もしません。
ただ、「ここにいる人間が確かに生きている」ことだけを、
冷たく、静かに、そして誠実に描き切っています。
誰にも言えない名義らしい社会の裏側への直視と、
感情を煽らない生々しさが際立つ一曲です。