江戸店鍵勘定伏見堤之幽太郎作思升屋のジャケット写真

江戸店鍵勘定伏見堤之幽太郎作思升屋

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inspired by 紀海音(きのかいおん) 作 浄瑠璃『傾城思升屋(けいせいおもいますや)』(1715)


江戸店鍵勘定伏見堤之太郎作思升屋


上の巻(伊勢参り名所道行・伏見堤の段)
物語は、升屋(ますや) の手代・市兵衛(いちべえ) が、店の金策のために江戸へ下る旅立ちから始まります。
伏見の堤(京都・伏見)で、市兵衛は、勘当されて浪人同様の身となっている若旦那・権兵衛(ごんべえ) と偶然出会います。
そこへ、夜な夜な旅人を脅かしているという「幽霊」が現れます。しかし、権兵衛はその正体が太郎作(たろうさく) という非人(物乞い)たちが仕組んだ偽物(作り物)であることを見破り、懲らしめます。
権兵衛は、恋人の遊女・かる(かるめ) を身請けしたい一心で、市兵衛が持っていた店の金(為替や銀子)を無理やり借りようと(あるいは奪おうと)します。忠義者の市兵衛は困惑しますが、若旦那の頼みに抗えず、苦悩します。

2. 中の巻(升屋店先の段・対面の段)
舞台は大阪・升屋の店先。権兵衛の放蕩により店は傾き、喜右衛門(きえもん)(または喜兵衛)という人物が借金のカタに店を乗っ取ろうとしています。
権兵衛は、以前渡してしまった「証文(手形)」を取り戻すため、喜右衛門と対峙します。
一方、権兵衛の妻や子供たちも登場し、夫の放蕩と家業の危機に嘆き悲しみます。権兵衛は家族への情と、かるへの恋慕の板挟みになりますが、最終的には義理や家族を捨てて、かるの元へ走る決意を固めます。

3. 下の巻(結末)
「烏(からす)の鳴かぬ日はあれど、主(ぬし)のござらぬ夜半もなし」という有名な文句と共に、二人の悲恋が描かれます。

【登場人物】
権兵衛(ごんべえ)
主人公。大阪の商家「升屋」の若旦那だが、放蕩が過ぎて勘当同然の身。情にもろいが、恋のために道を踏み外す。

かる / かるめ(小春?)
ヒロイン。権兵衛の恋人である。

市兵衛(いちべえ)
升屋の忠義な手代。店の再興のために奔走するが、権兵衛に巻き込まれる。

喜右衛門(きえもん) / 喜兵衛
敵役。升屋に金を貸しており、証文を盾に店を脅かす。

太郎作(たろうさく)
伏見の堤で幽霊に化けて旅人を脅かす非人。権兵衛に見破られる。

出羽(でわ)
権兵衛に関わる武士


実際の台本のセリフから抜粋
烏(からす)の鳴かぬ日はあれど、主(ぬし)のござらぬ夜半もなし

江戸店(えどだな)の勘定(かんじょう)や。
それ故、鍵(かぎ)まで取返し。
江戸通用(えどつうよう)の判(はん)も變(かわ)り。
粒(つぶ)一文(いちもん)、儘(まま)にならず。

七つの鐘(かね)の。
撞木町(しゅもくまち)見て行かんとは。
我に撞木(しゅもく)の氣になれと云ふ事か。
急いで行かば淀(よど)よりの出舟(でぶね)に乗らんと。
夕日影(ゆうひかげ)。
伏見(ふしみ)堤(つつみ)に氈(もうせん)敷かせ。」

「道頓堀(どうとんぼり)の風(かぜ)の噂(うわさ)。
……堺筋(さかいすじ)の門日(もんび)に。」

「時に不思議や。
人魂(ひとだま)と思(おぼ)しき猛火(もうか)。」
「暫(しばら)くありて怪したる者。
此街道の非人なるが。仲間四人が片輪にて。
露命(ろめい)かつんくなるに依り。ふと幽靈に思ひ付き。
或時旅人を脅せしに。錢金有る程置いて行く

そも我はこれ主(しゅ)を殺せし悪逆(あくぎゃく)の罪に沈みて修羅道(しゅらどう)に。


「胸も明け渡る、ハラッ夜明けの。
鳥(とり)の鳴く音(ね)だに。
どうやら氣(き)には障(さわ)れども。
……春(はる)の曙(あけぼの)。
霞(かすみ)渡る。
……哀れを知らすかと。


生如來(いきにょらい)殿御一人を二人して。
情の網の結目を。
粟津(あわづ)と聞くも恨めしや。
思ふ海津(かいづ)の浦もはや。跡に見殘し何時かさて。
大津の追分(おいわけ)を。左へ取つて行く道は。
萬代(よろずよ)迄も狼(おおかみ)の。谷の細道」
いとけわし(いと険し)。
さつても(さても)旅は物憂(ものう)しと。
云へどもそれは道連(みちづれ)の

江戸店(えどだな)の勘定(かんじょう)や。
それ故、鍵(かぎ)まで取返し。
江戸通用(えどつうよう)の判(はん)も變(かわ)り。
粒(つぶ)一文(いちもん)、儘(まま)にならず。

七つの鐘(かね)の。
撞木町(しゅもくまち)見て行かんとは。
我に撞木(しゅもく)の氣になれと云ふ事か

善(よ)し悪(あ)しにこそ」
歩めど跡(あと)へ引戻す。身の上知らぬ哀れさよ
そも我はこれ主(しゅ)を殺せし悪逆(あくぎゃく)の罪に沈みて修羅道(しゅらどう)に。

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